スカート
 
『遠い春』
 彼の音楽に対して多くの人は「透明感がある」とか「懐かしい」と評していて、それはいったい何なんだろうと思うのだけれども、聴いてみれば確かに懐かしい何かを心に抱いてしまう。その懐かしい何かに、スカートの歌声は淡々と距離を置いて存在していて、それは懐かしい記憶をいくらリアルに思い出そうとしても叶わず、結局は手を後ろ手に縛られながら曇りガラスの向こうの光景に現実を探そうとするような虚しい心理に「無駄ですよ」と声をかけているような……
 
  (レビュアー:大島栄二)  

 
『視界良好』
 スカートのメジャーからによるファースト・アルバム『20/20』がいい。FMでの流れ方から細部までグッとくる。曲によるものの、トッド・ラングレンの初中期の端々に感じさせる五感を刺激させるメロディ、詩、歌が響いてくるようなものがコンビニや界隈で頬を撫でるとしんみりと慕情を誘う。また、思わぬ雑多な場で、日本のオルタナティヴな音楽への嗅覚と表象を為された際にスティーリー・ダン、ムーン・ライダーズ、キリンジなども含めて、ポスト・パンクまでの意匠を踏まえたこの曲はこんな不明瞭で厄介な世で……
 
  (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))  

 
『CALL』
 どこかで聴いたことのあるような懐かしさがある。CMなどで流れてきても何の不思議も無いだろう。いや、僕が知らないだけで既に街のあちこちで流れていたりするのかもしれない。今となっては大御所となったかつてのインディーズバンドが今も変わらずに繰り出している王道のような安定感がある。そういうバンドが若かりし頃に好きになったファンは、バンドが歳を重ね、自分も歳を重ねてもずっと一筋に聴き続けるもので、その音楽にはもちろん価値があるけれども……
 
  (レビュアー:大島栄二)