キリンジ
 
『千年紀末に降る雪は』
 KIRINJIも20周年だという。KIRINJIがかつてキリンジと名乗っていた頃のアルバムの中に入っていたこの曲。とても哀しい雰囲気を持っていて。時代遅れとなったサンタの歌だという解釈があるが、サンタは時代遅れになったから哀しいのか。時代の最先端で人気絶頂であれば哀しくないのか。僕は、どんな者にも哀しみはあると思う質で、ようするにひねくれ者なのだが、他人に幸せを運ぶという人に幸せはあるのかというと、幸せを届けられたという自己満足だけで……
 
  (レビュアー:大島栄二)  

 
『エイリアンズ』
 休日ダイヤでこそ、真っ当に居られる感覚を持ち続けたキリンジがその後も外から柔らかく街に、アンガジュマンしながら、同時に悲しくも日々のエレジーを歌い、ときにダイレクトなメッセージやラブソングを届けながら、堀込兄弟としてのものが終わっても、名称は残り、今も歌い続けられる曲は数知れずある。不世出の、というには平易だが、キリンジに関しては都度の書き替えるための暗号式が巧妙で、その中で、先々にも継がれるだろうこの『エイリアンズ』の滑らかさは……
 
  (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))  

 
『進水式』
 淡いロマンティシズムと仮設定されたプレ・モダンな相対命題、要は在りし日の未来絵図の間隙をすり抜けるようなシティ・ポップが若い世代から続々出てきており、このmusipl.でも多数、取り上げられてきた。それは、いつかの大瀧詠一的な何かとの断層はあるが、それでも、シンプルなロックンロール、スタイリッシュなポップス、マッドで刺激的なエレクトロニック・ミュージックなどと相克するように、清冽なシティ・ポップは都市“の空洞”を目指すようで、音楽を通じて……
 
  (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))