GRAPEVINE
 
『すべてのありふれた光』
 ありふれていても、余りに社会的に個体内の許容量を超えることがある。だからこその、単節と沈黙は金なのかもしれない。余剰は要らない。本当に、奇遇にもこのアルバムのプロデューサーたるホッピー神山が関わった『退屈の花』と同じレコード店で買った。98年の5月の新星堂、店舗のサイズなどは変わっていたが、基本、同じ場所で。彼らにとってのメジャーとしてのフル・アルバムで、すでにラジオやライヴで披露していた曲群がおさまっている期待感とともに……
 
  (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))  

 
『Alright』
 ホーン・セクションの華やぎ、問いを投げかけるような歌詞の下でうねるグルーヴ。ポップネス、そして、フェイセズ、ストーンズ、ウィルコなどから通じるブルージーな重さと、どこか乾いたサイケデリックな音像。今では珍しくなったほどの”ロック・バンドとして”の音。細部や余計な御託を抜きに、GRAPEVINEとして、そして、今の時代に聴くべきひとつの曲としても「Alright」はとてもいい。多幸感と軽快さが宿るムード、香港でのMVの雰囲気合わせて抜けが良く……
 
  (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))  

 
『Arma』
 GRAPEVINEというバンドは兎角、デビューのときから「文学的な」という冠詞がメディア的にはついてきたように思う。ライヴでは全くもってずっと身体の奥底に響く音を鳴らしていたのだが、ボーカル、ギターの田中和将の読書家振りは所謂、当時から今でもかなりのもので、また言葉の言い回しとストーンズやアメリカン・ブルーズ、ソウル・ミュージックなどから影響を受けた粘り気のあるグルーヴははじまり的な「覚醒」のような曲での老成と……
 
  (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))