DOROTHY 『居酒屋讃歌』 Next Plus SongSAPPY 『Swimming Night』
MAMALAID RAG
『いつでもどこでも』
 シティーポップスとはたとえば、ときにブライアン・ウィルソン、トッド・ラングレンや山下達郎がスタジオに籠り、ロマンを仮構化した「都市」に向けて届けるための内延の差分だけ「きみと、ぼく」を巡るラブソングは清冽に混沌しながらも、過度な漂白と管理が行き渡った街の合間にするりと溶け込む。このママレイド・ラグは当初はバンド形式だったが、今は田中拡邦ひとりになり、徹底した美学の下、着実に活動を続けている。音の質感を突き詰めるあまり、パラノイアなまでに細部としてのロマンティシズムとしての音楽へ殉教しつつも、届けられる音楽はまるでこの忙しない現実とは全く別の場所から聴こえてくるようでもある。このMVも3分弱で終わる、ホーンもやわらかに入る夢見心地な曲。粗い画素、アンティークな喫茶店、なにげない団地、そこの現実を忘れて、フィルムの向こうの花びらを愛でるには、これくらいの温度が丁度、いい。架空の午後としても、一人でも、好きな人と一緒でも、家族とでも紅茶とシフォン・ケーキとともにこんな曲が流れている景色は決して、架空じゃない。
(レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))
 


   
         
 


 
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