Babi『owl』 Next Plus Song神谷成基『何にもないです。』
Hauschka
『Offbeat Session』
 音楽ではBPMという言葉をよく使うが、医学用語でのそれは1分間に動く心臓の鼓動回数のことで、安定した心臓のBPMは100から120としている。つまり、それ以上になってくると“心臓に悪い”、というところもあった訳で、ただし、高揚状態をもたらす訳だ。反語的にいえば、痙攣するような速いBPMで踊ったときトランシーになると同時に、その時の脈動も上がるように。100から120というと、現代では「遅すぎる」と思う人もいるだろうが、このドイツ出身、プリペアド・ピアノをときに用い、前衛精神を是に、“サロン文化”を現代音楽の狭い囲いではなく、外部へと接続してきたハウシュカの奏でる音はいびつながら、テンポはいつもやさしい。2012年のヴァイオリニストのヒラリー・ハーンとのコラボ作でも見事に、音のいとまに意味と緊張を込めていたが、これは彼の本懐がよく伝わるものとしてピックした。企画的なセッションだが、彼のピアノ奏法とアティチュードが満喫できると思う。ミニマルなリズムと位相を変えてゆくようなタメがピーク・ラインを抑止し、インダストリアルな質感が無機的にあえて響く。ただ、この無愛想さが馴染むというのは冒頭のよう、脈拍の知然たる調子と呼応しているから、という気もする。
(2014.2.7) (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))
 


   
         
 


 
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