The Goggles『PleaseFreezeMe』 Next Plus Songフジロッ久(仮)『あそぼう』

菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール
『大天使のように』

 ポストモダンという象徴記号を便宜上でも設定すると、自然と一部の人がリオタールの条件付け、鍵括弧付きの理論形成を想い出す、そんな「大きな物語の終わり」というバイアスに駆られることもあると思う。かの漫画家の小林よしのりが『戦争論』にて“大きな日本論”を戯画化したのが1998年のこととして、00年代に、そこをメタ・裁断化して、「ポストモダン」的に駆け抜けたひとり、菊地成孔は音楽家としての側面のみならず、プロデューサー、評論家など幾つもの顔をジェット・ラグで届けた。アイアン・マウンテン報告みたく。戦争不安神経症を“戦前”に罹患し、戦中には素面になるという意味文脈を仮に敷衍するならば、菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラールは2006年の作品がレヴィ・ストロースの有名な著書名たる『野生の思考』から始まり、本年の最新作では『戦前と戦後』に向かう途程での記憶喪失(学)として、この彼のオリジナル曲の「大天使のように」がもたらすデカダンス、衣擦れ的なアンサンブルは今、遡及されてもいいかもしれない。間延びし得ない緊迫たる新しい春の夜更けを惑わす、そんな麝香もある。
(2014.4.11) (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))
 


   
         
 


 
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