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ほたる日和
『東京組曲』

 知らないCDを聴くのだけど、古い作品より圧倒的に新しい方向へ手を伸ばすのは、成熟しきっているものより、ナニモノかになりかけている存在が好きだからだ。
 ほぼ裏声のソフトな男声ボーカルは誰かの実名付属の声でなく、自分の思い出のモノローグのよう。銭湯とスーパーのある街に引っ越してきた。部屋にこもって書き留めた夢の話。この蒔いた種は花を咲かすか。今も東京でどれだけの夢が光を失い、どれだけの夢が光を手に入れる。そんな、ナニモノかになりたい気持ちを唄うことは、自分自身の目標宣言であり、 同じ気持ちの者への応援歌で、心を失いそうな時に正気に戻させる。故郷の水を知る夜光虫、小さな光を寄り集めたバンドが拳を固め坂を上り、LEDテレビの光線となる物語り。CMソングやタイアップでほたる日和の歌は流れた。そんな活動が何年か経っても転機に思い出すの「東京組曲」でしょう。…って、この曲を初めて聴いた時に、思っていた。
 リアルに何年かが過ぎた今、バンドだったほたる日和からベースが抜け、ギターが抜け、ドラムも抜け、ボーカル一人だけのほたる日和になってしまった。そうなった経緯は知らないが、変わらない歌詞「何のために東京にきたんだろう♪」は数値獲得による自己実現でなく、約束を守り続け灯り続ける生き方なんだと感じる、そんな曲になっていった。
(2014.6.23) (レビュアー:北沢東京)
 


   
         
 


 
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