V6『MUSIC FOR THE PEOPLE』 Next Plus Songカトキット『雨ニモマケル』

行方不明
『ロマンス』

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 言葉は時代とともに移り変わり、だから今の感情は今の言葉でしか伝えられないのだろう。変わった名前のこのユニットが奏でるこの歌は、シンプルな構成でありながらもノイジーなベース音と甲高いシンセ音に満ちていて、耳がどうしてもそちらに引き寄せられていく、そのサウンドの合間に切実な声で表現されていて、だからどうしても音全体を聴く中のひとつのパーツのように感じられてしまう。だがそれなのに言葉を無視できないのはこの声がやはり切実な何かを帯びているからなのだ。その歌詞は今の言葉たちで紡がれていて。一例としては、昔なら「ぼく」は男で、だから男の側からの何らかの訴えだと規定されて、それを女性が歌うことの興味深さだったのだろうが、今となっては「ぼく」が男であるという根拠など失われ、普通に、女性が歌っている女性の言葉として認識される。いや、男が女がということを規定しようということ自体が、今の時代には合わない旧弊なのかもしれない。歌われている中身は意外にも普通の、そして少しばかり古めかしいラブソングで、言葉のチョイスが時代性をかき消そうとするような感じなのだが、しかしやはりこれは現代の詩だと思う。その現代の言葉で紡がれる詩が時代に関係なく人が持ち得るラブを飽きもせずに表現しているというのがなんとも興味深い。素顔を見せずに歌詞だけを飽きさせずに見せようとするリリックビデオは、サウンドの中に埋没しそうになる印象のある全体の中で、やはりこの歌詞をちゃんと伝えるというためにもとても有意義な手法だなあと思う。
(2015.11.16) (レビュアー:大島栄二)
 


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