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スバラシイセカイ
『エンドロールが終わったら』

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 どんなバンドもそのスタートは日々の生活とチープなスタジオから始まる。そこからライブハウスへ、ツアーへ、CDリリースに配信デビューへと夢は広がるし、実際にそういったいくつかのことは多くのバンドが実現していく。だが本当に目指したものは一体なんだったのだろうか。売れることか? 売れることを実現するバンドは極めて少ない。売れたバンドを勝者とし、それ以外を敗者と決めつけるのであれば、それは甲子園準優勝のチームもやはり敗者に過ぎない。そのたった1回の敗北で下を向いてしまうのであればそんな哀しいこともないだろう。甲子園など夢のまた夢のチームだってそこに友情はあるだろうし、厳しい練習とちっぽけな達成感はある。それを、是とするのか否とするのかだ。バンドも日々のライブでなかなか動員が増えない現実に悩みながらも、ライブ後の打ち上げで楽しいひとときを過ごす。それを、是とするのか否とするのか。チープながらも想いをストレートな曲として昇華させているこのスバラシイセカイという京都のバンドは、昨年その活動を止めている。この曲の中で「エンドロールが終わったら満員の観客がスタンディングオベーションで迎えてくれとは言わないから、たった1人君という観客が見ていてくれたらそれだけでいいんだよ」と歌っている。歌っている最中にそういう想いを持っていたのであれば、それはなかなか売れる方向に向かっていかないだろう。飛び抜けたセンスと強い意思があって、なおかつ本当の努力が加味されることで一握りの成功バンドは生まれるのだから。しかし、歌詞に言うようにたった1人の観客が見ていてくれたらいいと本当に考えていたのであれば、バンド活動停止という、ある意味のエンドロールが終わった今、特に後悔などは残っていないのかもしれない。そういう生き方もまた、スバラシイのだと僕は思う。
(2016.1.8) (レビュアー:大島栄二)
 


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