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熊木杏里
『飾りのない明日』

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 熊木杏里の歌はいつも勇気づけてくれる。彼女の空気がどこかに漏れているような声は感じようによっては頼りなげで、そういう頼りなげな何かから勇気づけられるとは一体どういうことなんだろうかと考えてみる。メッセージソングを歌う人は高らかに太い声で、こぶしを振り上げながら僕らを鼓舞しようとする。だが、そんなパワフルなものに当てられないようなマインドの人は、そもそも勇気づけられる必要など最初から無いのかもしれない。やることなすこと全部うまくいかず、手にしたと思っていた僅かな砂が指の間からこぼれ落ちていくのを止められずただ震えながら見るしかやることの無い、そんな人こそ誰かが勇気づけてあげるべきなのかもしれず、だとすれば、ただ能天気に頑張れ頑張れと無理に手を引っ張っていこうとする歌よりも、彼女の空気が漏れ続けているような声が、語尾を振るわせながらささやくような歌こそが、勇気を希求する人にダイレクトに届くのかもしれない。レーベルをヤマハに移した第一弾のこの曲も、良い。飾りのない明日が、誰にとってもいい日でありますようにと願いたくなる。
(2016.6.18) (レビュアー:大島栄二)
 


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