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odol
『時間と距離と僕らの旅』

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 様ざまな天変地異や艱難辛苦が続く2010年代では、もう地平線の向こうの庶事を想像するのが難しくなったと思う。想像するというよりあえての、知らない振りをした方が楽で、諸問題は属性のみならず、個々内に放り出されて、レディオヘッドの「No Surprises」な幸福絵図が決してそうではないような、その鼓動を受け継いだアナログフィッシュの「抱きしめて」での、人気のない場所での静かな生活を望むがそれはどこにあるのと問うような、そして今、その流れに沿いつつも、また不思議な温度でodolの「時間と距離の僕らの旅」の清冽さが際立つ。ただ、彼らの場合、僕らや二人や汎的な描写よりもっと「君」に向けて届けられる。君が僕に気付いたら、距離と時間が自然と曖昧な視点を新しくさせるような。過去にSWITCHのインタビューで森山公稀(Pia,Syn)が「誠実に他者と向き合い、何かしらの救いを求めて自分たちがアクションを起こし続けてみる」と言っていたが、個人的には、誠実で居るにはあまりに酷な瀬だからこそ、おのずと表現は悲しいほど優しくならざるを得なくなり、それが程よくていいのだと思う。要は、誠実にリアリティと向き合うほどに救いがなくなってしまう表現が”大きくなる”のは違う気がする。

  もし僕がどこの国にも疲れたら 
  悲しいけれど置いてってよ
  あの山を越えたら 雲に飛び乗ってさ
  世界中を見渡すよ ほら 約束さ
  どこまでも行こう 君の目に映る全てが新しくあるように

 旅に出てみても、行き止まりはある。旅には時間が要る。その時間の分、距離を追い越して相対してみれば、エントロピーの分、それが君になる。君は君の場でいればいいし、僕が僕の場で安心なはずもない。安心なら旅に出られないのが今のご時世で、ばらの花を摘んで次の世代に新しい未来を渡してゆくにはあまりに哀しすぎる世を嘆きながらでも、綿毛のようなステップで道は続くかもしれない。odolはきっと、より今まさに旅の途中の「君」に近付いてゆくと思う。俄然、研ぎ澄まされたいいバンドになってきた。
(2018.4.13) (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))
 


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