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IIVU
『UP&DOWN』

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 どこか懐かしいなと感じるのはその懐かしい元となる時代に生きていたということの現れで、その頃に生まれていなかったり音楽と接していなかった人はそんな感覚を覚えたりしないのだろう。IIVUというユニットの音楽を僕は懐かしいと感じる。ではその元となる時代って何だろうと考えてみるがすぐに「これだ」というような時代や音楽は思い浮かばない。だからもしかすると明確にあの頃の音楽を彷彿とさせるような「あの頃」というのはなくて、いくつかの時代をミックスした結果のサウンドなのではないかなあと想像する。例えていえばプロ野球OBチームが結成されて、そこに70歳代の選手と40歳代の選手がひとつのチームになっているような。彼らが現役時代にそんな組合せのチームなど無かったのに、選手1人1人に対して「懐かしい」という気持ちは正しくて、結果としてそんな音楽は過去に無かったのに「懐かしい」と感じてしまう。彼らのHPを見てみると、「80s、90sの邦洋POPSから影響を受け、懐かしい雰囲気が漂う中にも新しいサウンドが盛り込まれた楽曲」とある。基本はファンクだと思うが、そこにいろいろな音色だったりフレーズが入り乱れる。世の中にロックさえ存在しなかった時代から、ジャンルはどんどんと細分化されて、もはやひとつひとつのジャンルがどんな音楽を指し示しているのかもよくわからないようになった今、そしてストリーミング配信が主流になり人々が過去の音源にも等距離でアクセスできる今、ミュージシャンが新しい音楽を生み出そうとしてもまったく新しい音楽が誕生する可能性はほとんど無くて、だから様々なものをミックスして、懐かしいけど新しいものを模索するしか方法は無くなっていく。そういう時代の、こういう曲はひとつの答えだったりするのだろう。これを「久保田利伸っぽいぞ」とか「FLYING KIDSのあの曲に似てる」なんてすぐに思っちゃって比較して批判するような旧い世代はもう過去の音楽に閉じこもっていればよろしいのであって、過去のバンドやアーチストなど体験していない世代が、自分たちの時代の音楽を作り、支えていけば良いのではないだろうか。個人的には、JUNKOさんのブインブイン鳴っているベースの唸りと、1:45あたりで「ひとりにしないで」と歌っているのに謎の外国語にしか聴こえないSHOTAさんの歌い方が超ツボである。
(2018.7.6) (レビュアー:大島栄二)
 


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