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 カッコいいバンドサウンドというのを常に探していて、ずっと探しているとどういうのがカッコいいのかが見えなくなる時がある。カッコいいというのは本当に漠然とした概念で、ある人にとってカッコいいものが別の人にとってはまったく響かないなんてことはよくあるし、だから今の自分にとってカッコいいものが明日の自分にとってはまったく響かないということも当然ある。だから「今これがカッコいいと思う」という宣言が容易に他人に否定されるし、明日の自分に否定されることだってある。否定されると挫けるし、挫けると「これがカッコいい」と表明することに躊躇してしまうようになる。結果として「世間で売れている」という明確な指標にただ従うような音楽鑑賞に成り下がってしまったりもする。でもそれはやはり、成り下がった状態でしかないのです。
 成り下がりたくなんてないから、僕は高らかに宣言したい。この曲はカッコいいです。見たことも聞いたことも無いバンド名なのでちょっと調べると2010年にメジャーデビューしたバンドだと。知らないよ。セールス的にはけっして成功しているとはいえず、最初のリリースから3年も開いたりしてて、よくこれでメジャー契約が切れてないよなと不思議に思うが、なぜか切れてないのだろう。リリースが開いている間に同人活動に精を出していたようで、ただただ音楽で成功したいというビジネスモード全開のバンドでもなさそうで、その不思議な立ち位置が面白い。同人活動で広がった人脈からなのかアニメの主題歌などで実績があり、そちら方面での知名度が高いのかななんて推測したりする。だが、そんなことはどうでもいいのです。この曲はカッコいい。アニメとかアニメじゃないとか、売れているとか売れてないとか関係なく、カッコいい。ボーカルichigoの声は30年前のREBECCAのNOKKOによく似ていてキレがある。キレがあるし伸びがある。だがそのボーカルに寄りかかっているバンドではなくて、音のひとつひとつにキレがあってカッコいい。バンドサウンドとしてとてもカッコいい。これはミックスするエンジニアの腕が卓抜だという点を見逃せないのだけれども、すべての楽器の音が全部クッキリと聴こえていてしかもすべてがキレを持っていて、結果的に緊張感を曲全編に生み出している。誰にもはっきりと判るギターソロやスネアの異常にスパッンと響く音のカッコ良さはもちろん、ボーカルの後ろでかすかにしかししっかりと鳴っているグロッケン(多分)の音がボーカルとの相乗効果を生んでいるところなんて、ただならぬバンドのアレンジ力だなと感心する。ただ感心するだけなら単に学術的な評価でしかないが、そういう小さな工夫と小さな音の重なりが聴いている者の心をゾワゾワゾワとさせるし、盛り上げていってくれる。こういうバンドサウンドこそカッコいいと僕は思う。これとはまた別の種類のカッコよさという価値はもちろんたくさんあるのだけれど、これは確実にカッコいいと宣言できる。女性ボーカルをフィーチャーするために後ろで伴奏しているだけのバンドが本当にクソ多い日本の音楽シーンで、むしろバンドサウンドが主役として存在していて、聴いていて心地良いしワクワクする。
(2018.12.6) (レビュアー:大島栄二)
 


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