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おいしくるメロンパン
『命日』

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 冒頭から死んだ友達の命日も思い出せなくなってたという歌詞が放たれてて。曲のタイトルでもあるその単語が、じゃあ曲全体のテーマとかイメージをリードする何かなのかというとどうもそんなことでもなさそうで。まだ若いバンドの彼らにとって本当に友人が死んだという経験があるのかや、仮にあったとしても命日を忘れるほどの時間が経過しているのかとか、どうもそんなはずはないだろうとか思ったりもするけれど、絶対に違うよと断言できるほどの情報もなく。それで想像の通りに友人の死なんてことが体験として無かったとしても、昨年リリースの3rdアルバムには他にも「水葬」というタイトルの曲があったり、「dry flower」だって生命に溢れるイメージとは対極の何かを感じさせる。させるからといって曲の何かが具体的に死と結びついているのかというとそうでもなく。なのに曲全体を不確かな暗さが覆っていて、ナカシマのハイトーンな歌声が世界を突き放したようなクールさを醸し出していることと併せ、変拍子のような不規則なリズムを取り混ぜつつ、ただただ無心に聴いている人に不安と動揺を押し付けるようなテイストで迫ってくる。
 動画のコメント欄にはこの音楽がエモだという意見が並んでいて、ほう、これがエモかと不思議な納得をさせられる。エモという音楽ジャンルは具体的に何なのかという明確な分類が難しい。同時にスタイルとしてのエモがある程度確立することで、内容よりもスタイルによるエモバンドが台頭してきて、結局なんなんだそれという疑問が拭いきれずにずっといて。そんな中でこういうバンドが多くの人に「エモだ」と認定されているということは、そうだよな、エモはスタイルではないんだよなという僕が従来持ち続けていた疑問の根本にある考え方が肯定されているようで嬉しかったりする。
 友人の命日は、その死の在り様が特異であればあるほどショッキングで、記憶に焼き付く。しかしそれでさえ忙しい日常の中ではうっかり忘れてしまうことは普通にある。命日をつい忘れてしまった友人は、そろそろ本当にあちらの世界に行っちゃってくれようとしているんだなあと思って、差し支えないのではないだろうかと、7年も経ってそう思う。
(2019.3.17) (レビュアー:大島栄二)
 


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