Crispy Camera Club『ネイビー・ショア』 Next Plus Songkasa.『あいまいなことば』

ORIGINAL LOVE
『ゼロセット』

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 田島貴男はいったい何歳なんだろうと思って調べたら53歳だった。しぶといよな。かつてのようなビジネス的な盛上がりは去って、ORIGINAL LOVEとしての活動でどのくらい稼げるのだろうか。そんなのはまったくの余計なお世話だし、生きているのだから活動しているのだから、ちゃんとそこそこに収入は得られるのだろう。だとしても、音楽活動は大変だよ。パーマネントなバンドメンバーがいなければ、ライブごとに人を集めてリハをやる。いやまあ最初から売れてないバンドマンやミュージシャンも売れてないからって音楽やめるヤツばっかりじゃないし、いろいろな苦労を抱えながらも続けているのは、やはり根っからのミュージシャンだということの証明だともいえよう。
 53歳は田島貴男だけじゃなく同世代の多くも人生にいろいろなものを抱えてて、順風満帆にいっている人もいれば、リストラされる人もいるだろう。家族を養うために汲々としつつも収入は下がりという人もいれば、離婚で家族を失う人も。本当に様々で、一応「順風満帆な人もいれば」と書いてはみたもののそんなのはほんの一握りで、ほとんどは何かしらの問題を抱えているんじゃないかと想像する。しかしながら、50も過ぎればすでに人生の後半に入っているのは間違いなくて、そこから新たな人生を切り拓くなんて、可能性の点でも、エネルギーやバイタリティの点でもかなり困難。20代が社会人になるにあたって希望に燃えるのとは訳が違う。そもそも、若い頃に描いた人生設計通りに進展していたのなら、50を過ぎて新たな人生なんて考える必要も無いのだから、これから新たな人生を考えて突き進んだところで、その青写真のとおりに進む保証はない。そんなことを考えると、新しい挑戦なんて足がすくむばかり。とはいっても、このまま座していても明るい未来を想像出来ないという人はやはり少なくなくて、じゃあどうしたらいいんだよと叫んでみたところで、誰も理想の答えなど教えてくれない。
 田島貴男は50を過ぎて、昔のようなスリムな面影は完全にどこかに行ってしまっている。いやいや、50代でこの体型なら立派な方だよという人は多いだろうし、僕もそう思う。しかし、20代の彼と較べたら同じだなんてなかなか言い難い。ホームページにあるDIARYには2017年の夏フェスの様子が載ってて、「会場に着くと、ふくらはぎに痛みを感じた。」とか書いてあるし、「ちなみにアラバキであれほどジャンプできたのは6年前から始めたチョビジョグをやっていたからだろう」とも書いてある。地道なトレーニングで健康を維持しようとして、しかしふくらはぎに痛みを感じる。ああ、50代だなあ。自分に重ねるとよくわかる。もう昔のような自分ではないのだ。
 しかし、彼はこの曲で「ゼロセットしよう」というメッセージを送る。「最後まで攻めよう」と歌う。「人生に何度も挑もう」「チャンスはライトナウ」と叫ぶ。いいな、いいよ。やる気が出てくる。若者に向けたメッセージソングは数在るが、50代へのメッセージソングは珍しい。しかし、この曲はそんなに音楽ビジネスとして大成功を収めているとは思い難い田島貴男が歌うから、リアリティと強さを伴って同世代に響く。そうだ、いつからだってリセットして挑んでいいんだと。チャンスはライトナウなんだと。同じことをミックジャガーやポールマッカートニーが歌ったとしても、いやいや、そりゃああなた住んでる世界が違いますがなと言いたくなるが、田島貴男なら、うんうんオレも頑張るよと、ちょっと思いたくなってくる。そういう強いメッセージを投げかける彼の笑顔が、頬に付いたわずかな贅肉のせいで藤岡弘、に見えたりするから、余計に共感できてしまう。オレにも贅肉は付いているよ、でも頑張るよと。
(2019.8.24) (レビュアー:大島栄二)
 


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