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日食なつこ『あのデパート』【デパートという「時代」のレクイエムとして】

扇情的な鍵盤を叩く日食なつこ。特別に打力があるということでもないのに底知れぬパワーを感じさせるその鍵盤の音、鍵盤力といってもいいのだろうか。その日食なつこの最新曲は彼女の地元で43年続いたデパートの閉店に捧げたバラード。名曲だ。淡々と弾く鍵盤と歌。これまでの彼女の歌とは一線を画すようなテイストを感じる。一貫して内面をえぐるような描写を続けてきた作風とは違い、過去の思い出をひとつひとつ重ねるように描く。単なる風景描写のようでありながら、知らず知らずのうちに情念のような感情を感じてしまう。田舎町で育つ人間にとって街の象徴でもあるのがデパートで、それは、通った学校と同じように人生を映し出すような存在なのだろう。日食なつこがマルカン百貨店を歌うことはすなわち彼女の人生をあぶり出すような効果を持って聴くものに迫る。マルカン百貨店など知らないリスナーにもそれぞれのデパートがあり、その自分のデパートを思い起し、結局は自分自身の人生を思い起す。もちろん、デパートを歌えば誰でも名曲が掛けるわけではなく、日食なつこの他の曲にも通じる底知れぬ表現力が、多くの人に自身の人生を重ねさせるのだろう。昨今は地方のデパートが次々と閉店している。ビジネスモデルが時代に合わなくなっているのは致し方ないことで、時代の流れとともに駅前から姿を消すことは避けられないのだが、多くの人たちの人生に関わってきた施設が消えるというのは大きなことで、既に誰もそこで買い物をしなくなっているにも関わらず、閉店の報には多くの人が残念と言葉を漏らす。この曲はデパートという「時代」のレクイエムとして、そういう人たちの残念な気持ちを仮託する役割を果たすのかもしれない。

(2016.10.20) (レビュアー:大島栄二)


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review, 大島栄二, 日食なつこ

Posted by musipl