<!-- グーグルアナリスティック用のタグ -->

Summer Moon『With You Tonight』【ノスタルジアと野暮ったさと、雨情がどこかに宿っているような】

雨情の響きは美しいが、上田秋成『雨月物語』は背筋の奥が痺れた。そういうもので、雨があがったら、かならず虹が架かるとも限らない世において、壊死を始めた季節感のなかで虹彩を間接的に拭くことが出てくる。フォーカスを合わせてみると、まるで街ゆく人はダンサーみたいで、ビルディングはサーカス場みたいで眩しい。寂れたモールに入って食事処にはいっても、気の置けない人とだと愉しい。乱気流のようにカモミール・ティーが対話をほぐしながら、カルチャーが泡立つ。

ザ・ストロークスのベーシストたるニコライが結成した彼らの音楽にはゆるやかな和みがある。せわしないようで、トーキング・ヘッズ的で、チープなビートでどこかエイティーズな香りと気だるさ。活然と起き上がるより、ふわふわしていたい情感。万年つうじて、夏になってしまったかの「ような」ときにノスタルジアと野暮ったさと、雨情がどこかに宿っているような―。映像の粗さもいい。繰り返される“君と今夜”ってフレーズまでこういう肩の力の抜け方がある音楽はどうにも嫌いになれない。ニコライらしく他にも多様な曲群があって、これからにもザ・ストロークスとともに継続していってほしいのだが、どうにもこの内面的な雨情性の先には浅い夜が待っているのが多少なりの気まぐれさも感じ、そこものんびりでいい。ニューヨークの混沌、または、ハウス・オブ・ジェラス・ラヴァーズは巡る。乾いた湿度が心地好く心のアスファルトに染み入る。是非、360度アングルで楽しんでほしい。

(2017.4.24) (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))


ARTIST INFOMATION →


review, 松浦達

Posted by musipl