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シナリオアート『スターサイドシンドローム』【焦燥感をリズムで表現していて素晴らしい】

カラフルで切ない。曲のイントロから始まっているドラムのフレーズが心を掻き立てる。ある意味マーチのような、行進曲が始まるような雰囲気を持ったリズム。他の楽器も確かに存在しているのだけれど、主メロをささえて増幅させるようなフレーズを一切排除したかのような、すべてがただのリフのように存在していて、やはりこのドラムの圧力を増すためにだけ楽器が追従しているように構成されている。そのことによって、歌が前に前にと押し出されていく。時間の流れ的にも前に前にと進むことを強要されていく。歌詞の中にもその焦燥は描かれている。

  行き場のない悲しみ 変われない苦悩
  いつか いつの日にか 笑い話にしような

生きていると、どうしても今の場所からの移動を余儀なくされる。時間が過ぎていく。年齢が増えていく。予定されたいつかは気がついたらすぐそこに来ていて、そのことに気がついたら、そのいつかもすぐに過去に去っていくことも自明になる。それなのに、僕は今ここから動けずにいる。人生なんてそんなことばかりだ。

過ぎてしまえば、すべては本当に笑い話になるし、その笑い話すら記憶に留めている人が誰もいなくなる。だから悩んだり苦しんだりする必要などまったくないのに、ただ押し出されていくという感覚に気づいてしまって、誰もが解決方法のない穴に落ちていく。

その不可避の感情があるから、僕らは人間でいられるのだ。そのことを、この曲は焦燥感とともに表現していて美しい。その焦燥感をリズムで表現していて素晴らしい。

(2020.9.24) (レビュアー:大島栄二)


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Posted by musipl