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MARQUEE BEACH CLUB『home』【せっかくだからとかもったいないからとかではない、考え抜かれた音楽】

レコーディングというのはひとつひとつの音を順に重ねていく作業で、例えばメンバーが4人のバンドがライブやるときには4つの楽器とボーカルとコーラスくらいしか鳴っていないのに、レコーディングでは上から上へと次々と音を重ねることができるから、その自由度が楽しくなってしまうのか、あれも入れようこれも重ねようとするバンドマンは意外と多い。重ねる理由が「せっかくだから」というものであれば、仕上がりが良くなるわけがない。そんなの、「もったいないから」という理由でいろいろなものを捨てずに溜め込んでしまった小さな部屋のようなもので、ただ乱雑なままのサウンドになってしまう。

綺麗でセンスのある部屋にするにはどこにどういう小物を配置するのが良いのかが勝負の分かれ目だ。雑誌に出てくるようなおしゃれな部屋はなんとかコーディネイターというプロが配置を熟慮して出来上がっているのであって、だからセンスがいい部屋だなあとウットリするし、そこに置いてある家具や雑貨を買いたくなってくる。買ったところでどんな部屋でもセンスアップするわけじゃないんだけれど。

この曲を聴いて驚くのは、男女ボーカルの絶妙なバランスだ。男女混声バンドというのは時々いて、あるバンドは両者がバトルするような感じでパフォーマンスするし、またあるバンドは男性ボーカルを前面に押し出したり、女性ボーカルを前面に押し出したりする。どちらかが前面に出る場合、後ろに控える側はせいぜいコーラスをつけるのに毛が生えた程度にしてしまう。しかし、このバンド。MARQUEE BEACH CLUBの歌は基本女性ボーカルがメインであるように聴こえつつも、一部のパート以外では男女が同じ程度に歌唱している。その時の男性ボーカルが、前に出ることもなく、かといってサブに徹するような控えめさもなく、それでいて女性ボーカルの楽曲だという印象を持つようなテイストにミックスされている。もし、この曲で男性ボーカルがなくて(あるいはコーラス程度だったりして)女性ボーカルだけの構成になっていたらどうだろうか。おそらく、この曲が放っている軽やかさや爽やかさはすっかり失われてしまうだろう。かといって男性ボーカルがもう少し声を張ったり、ミックスでもう少し音量を上げていたりしたら、それも楽曲全体の性格が違ったものになってしまうだろう。そう考えた時、ああ、これは考えて考え抜いた結果のミックスなのだなあ、絶妙のレコーディングなんだなあと思えたのだ。「せっかくだから」とか「もったいないから」とかではなく、もちろん「オレももっと目立って歌いたい」でも「アタシだけが目立つのはイヤ」でもなくて、楽曲がいちばん輝くバランスは何なのか、バンドがいちばん活きる表現手法は何なのかを追求して、必要なものを必要なだけ、必要ではないものは一切カットして、そうして作り上げられた、センスあふれるミュージックなんだろうなあと痛感してしまう。

(2020.10.12) (レビュアー:大島栄二)


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review, 大島栄二

Posted by musipl