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岩崎宏美『ロマンス』【見えている世界というのはまったく違っているんだろうなあ】

つい先日筒美京平が亡くなったという報道があり、いろんな人が悼み、懐かしみする様子がSNSに溢れてた。一時代を築いた大作曲家だから曲数も膨大で、悼む人がとりあげる曲も様々で。いまさら僕がここでどうこう言う必要などさらさら無いのだけれど、まあちょっとこの曲を取り上げる。

岩崎宏美はスター誕生というアイドル発掘番組から生まれた歌手で、先行していた森昌子・桜田淳子・山口百恵の後だったし、○○トリオみたいな括りもなかったので単独の歌手として勝負する他なかったのだけれど、抜群の歌唱力ということを武器に、たちまち人気者になっていった。確かに歌は上手いけれど、今あらためて聴いてみると、なんというか、このくらいの歌唱力のシンガーは今じゃゴロゴロいるよなという感想だ。もちろん現代のレコーディング技術は当時とは較べものにならないくらいに進化しているので、ちょっと音程が外れている部分があっても何度か録った中から上手く切り貼りをすれば何とかなるし、何度やっても音が外れている場合はその部分だけ音程を修正することだってできる。録音の際にどうしても発生するノイズをデジタル処理でスッキリと取り除けるし、だから商品になっている歌声をその人の実力と思ってはいけないところはあって、だから1970年代の歌手の人と現代の人の歌唱力を比較するのは難しい。しかし、だからといって現代のシンガーの歌が全部後からデジタル処理されたニセモノというのもおかしな話で、やっぱり、70年代に世間を驚かせた岩崎宏美の歌唱力を凌駕するシンガーは、現代に数えきれないほどいるというのはあながち間違いではないはずだ。

楽曲についても、筒美京平(だけじゃないけど)が無数にステキな曲を量産したものだから、後代のクリエイターがいくら良いメロディを思い浮かべても「それ、あの曲のパクリかもしんない」とか揶揄される恐れがあるし、そうなると過去曲には存在していないフレーズを生み出すことイコール重箱の隅をつつくという、ニッチ産業みたいなことになる。本当の産業は新たな技術も新たな需要も生まれるから、まったくの新分野でビジネスを創造することも出来ようが、作曲は、せいぜい12音階の組み合わせでしかないので、例えば「新たに18音階のミュージック理論を発明しました」とか狙ってみたところで、たいした成果を生み出せないのは想像に難くない。

だからこそ、僕は今この現代に新たな音楽を作ろうとチャレンジする人を賞賛したいのである。

だからといって過去の音楽を全否定するつもりなんて無いし、60代の人が20歳の若造バンドが歌う人生についての讃歌に共感できないのもよくわかるし、仕事に疲れて最新の音楽をチェックする気力もなくて青春時代の名曲に一生すがる気持ちも尊重したいので、毎週土曜日には懐かしの曲を中心にレビューするわけで、まあどっちもいいよね、という感じです。

岩崎宏美は僕がビクターのセールスマン時代に、毎年秋口にベストワンというシリーズがあって、過去にビクターに所属した歌手やバンドの名曲をベストCDにして毎年大量に売るという企画だったんだけれど、その中で岩崎宏美のベスト盤をたくさん売ってました。やはりビッグネームだったわけです。お会いしたことは1度もないけど、なんとなく同じレコード会社的な親近感はありました。この曲を聴いて、確かに歌上手いし、名曲だなあと思うけれど、じゃあ今の10代の人たちがこの曲を聴いて、どんな風に感じるのだろうか。それはちょっと興味ある。50代以上でこのデビュー曲をリアルタイムに聴いた人と、YouTubeでたまたま偶然に初めてこの曲を聴く10代と、見えている世界というのはまったく違っているんだろうなあ。

(2020.10.17) (レビュアー:大島栄二)


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Posted by musipl