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THE SUMMER ENDS『小夜』【ナチュラルな感じで、それで声の揺れがあってとても良い】

ボーカルの声がめっちゃ良い。個人的な好みかもしれんが、めっちゃ良い。要所要所で差し挟まってくる短いファルセットや、ファルセットにもならない部分での声の揺れがめっちゃ良い。ファルセットが魅力的なボーカルは音域高めに設定された曲を歌うことが多くて、何故なら地声の限界点をちょっと上回るところで魅力炸裂するのだから当然そうなるわけで。その結果、低音域を歌ってくれることが少なくなってしまう。高音域を得意とするシンガーは低音域が苦手なこともあるだろうけれど、低音域も得意であっても歌のキーを高く設定することによって低音域を披露することが減ってしまうのはもったいないことだ。だがこのTHE SUMMER ENDSというバンドはそういうキーをいじるということをしていないみたいで、低音域を歌う部分もちゃんとあって、それがまたドスが利いた感じでめっちゃ良い。こういう歌を聴くと、楽譜通りにきちんと歌うことのなんと単調なことかと改めて思い知らされる。全体的に腹の底から声を張っている歌唱でもなくて、だからとても自然体。なんなら近くで鼻歌歌ってるんじゃないかくらいのナチュラルな感じで、それで声の揺れがあってとても良い。

ただ、このバンドはバンドであろうとする想いが強いのか、このボーカルを活かそうという強い意志が感じられず、楽器の音もきっちりと前面に押し出されている。曲の最初がギター弾き語り状態で、そこからしばらくはギター抜きのリズム隊だけの演奏にボーカルが載る形で、それだけならボーカルも中心で主役としていられるのだが、1分35秒からギターも入ったロックサウンド全開ということになり、そのせいでボーカルが全体の中でどんどん沈んでいく。多分、そんなに考えずにミックスしているのではないか。さもなければ、このロックサウンドが前に出るバランスを最良と判断しているのだろう。それはそれでひとつの判断だし、その価値観の元にどんどん押していけばいい。しかし、もしもそんなに考えずにこのバランスに結果的になっているだけなのだとしたら、もっとボーカルを活かす方向でミックスするようにするだけで、もっと彼女たちの良さが伝わりやすくなるんじゃないかなあと、まったくの部外者で余計なお世話だとは知りつつも、ついついそんなことを考えてしまう声だったのだ。

(2020.10.27) (レビュアー:大島栄二)


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review, 大島栄二

Posted by musipl