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阿部真央『Be My Love』【シンプルなことをシンプルに表現しながら常に最前線】

ビニールのようなものに顔をつつまれて歌う阿部真央。コロナ禍の中のソーシャルディスタンスのようなものなのだろうが、画面との距離はむしろ密なくらいの密着ぶり。歌の内容の点でも2人の距離が全然縮まらない苛立たしさや切なさなんだけれど、それを歌うあべまの超シャウト。もう近いんだか遠いんだか近いんだかよくわからない。ただ、このビニールを被ってなければ飛沫はとびまくりだろうなということは確かで、そういう意味でもこのビニールに包まれている阿部真央のドアップMVは、今の世の中の不思議な距離感をよく表現しているなあと感心する。

阿部真央の曲はいろいろな分野に渡っていて、1曲1曲結構違う。しかしながら特別複雑な表現を使うことはなくて、どれも直球勝負だなあと思う。この曲も片想いしている女性が誰しも思うようなことをそのまま歌っているだけ。こんなの過去にも誰かが歌っていただろ、誰かというよりも誰もが歌っていただろ、と正直思う。が、ちゃんと彼女の歌になっていて、過去に歌われていただろうこんなのとは明らかに違ってて、直球が豪速球となってリスナーに届く。例えばほぼ同世代(誕生日が1ヶ月ほどしか違わない)のテイラー・スウィフトの曲は意味深で、言いたいことがそのままの言葉では表現されず、全体の中でいろいろな言葉が重なりあうことで意図が複層的に伝わってくるような感じ。言ってみればアートな表現がされている。そういうアートな表現であれば、ひとつの事柄を表現するのにいろいろなやり方ができるし、深くて高尚だなあというアーチストイメージにもつながりやすい。それはアーチストの寿命を長くさせることにもなる。一方の阿部真央のような表現は、ひとつの事柄を表現する何通りのやり方を許してはくれず、その結果アーチスト寿命を縮めてしまうのではないかとついつい思ってしまうのだが、なんのなんの、すでに11年のキャリアを重ね、勢いが止まるような雰囲気などかけらもない。シンプルなことをシンプルに表現しながら常に最前線の鮮度を保ち、出す曲出す曲「すごいなあ」と感心させてくれるのだから本当に恐れ入る。musiplでも毎年のようにレビューしてるのは、レビューしたくなるくらいいい曲が毎年出てくるからだ。今年の始めにリリースした9枚目のアルバムのタイトルが『まだいけます』なのだが、本当にまだいけますよ。まだまだですよ。

(2020.11.7) (レビュアー:大島栄二)


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Posted by musipl