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西山小雨『僕らの時代』【若者に限らず、今に生きるすべての人にエールを送る】

とても明るくて心弾まされる。今の若者は明るい未来を見ることが難しく前向きなエネルギーを出すことが難しい時代に生きているといわれることが多い。たしかに経済の状況などを見る限り昭和の高度成長期や平成初期のバブル経済期にあったような雰囲気などはない。しかし、だからといって若者がすべて展望無い暮らしをしているのかというと、そんな決めつけはジジイの戯言だよという人も多かろう。一般にいわれている未来予測が正しいかどうかは別としても、若かろうと老いていようと、明るく前向きな展望を抱いて生きる権利は誰にでもある。このMVは小雨降る線路脇の道を主人公(?)の女性が歩きながら、いろいろな人と出会い、踊り、歌うというプチミュージカル仕立てになっている。なぜ雨の日に撮影するんだ、晴れている方が動画撮影には諸条件のほぼすべてで有利だろう、ああそうか、これだけの出演者のスケジュールを再調整するのは難しいからもう小雨だけど行っちゃえということになったのか。と普通は思うけれど、実際はそうじゃない。雨だろうと台風だろうと大雪だろうとこの日のこの時間に撮影する必然性があったのだ。2019年の4月30日から5月1日に変わる瞬間に撮影するというコンセプトで11個の映画(?)が撮影された、そのひとつとしてのMVなのだそうだ。場所がどこなのかをGoogleマップのストリートビューを頼りに確認すると、新宿西口のガード下に北の方から線路脇の道を南下するあたり。その日の天気を確認すると雨なので、そこで間違いないだろう。ある特定の場所と時間に撮影するのだから、車が通ったり他の人が通ったりするリスクはそこそこあって、それを封じるためか、ガード下のあたりには踊ることのない人たちがたくさん立って道をふさいでいる。あああ、ビデオ撮影は大変だよなあと改めて思う。そうしてセットアップされた状況での一発撮り。曲の時間から逆算して何時何分から撮影がスタートする。最初は1人、続いて2人。やがてちょっとずつ増えていって、決められた振付けのダンスが始まる。いいぞ、いいぞ、これはボリウッドのミュージカルか。この華やかなダンスにピッタリなのがこの曲。僕らは自由だ、僕らが時代だと高らかに叫ぶ。歌詞に合わせて立ち位置も決まってる。登場人物の動きに合わせてカメラも、そして曲を流す再生機とスピーカーを持っている人も映ってないけど一緒に動いてるし走ってる。良くできたMVだし、勢いのあるMVだ。その勢いのベースになってささえているのがやはりこの曲そのものなのだろう。サビ以外では憂いも感じさせるメロディだし歌詞なのだが、サビに向かうに連れて内なる情熱を沸々と表面に出していき、サビでスパークする。今の時代を僕らの時代だと、そして僕らが時代だとキッパリと言い切る。そうか、今頑張っていいんだと思わされる。それは若者に限らず、歳をとってる人も含めて今に生きるすべての人にエールを送る力を持っている、凄い曲だ。

赤い服を着て踊ってる女性が西山小雨さんなのかと思ったらどうも違うらしい。よくよく見ると、ダンサーたちが入ってくる前の57秒付近で花を差し出す人と一緒にウクレレを持って登場するのが西山小雨さん。歌が終わって令和へのカウントダウンをする時に赤い服の女性の隣に再び登場する。撮影楽しかっただろうな。令和に変わる瞬間に撮影するというコンセプトなので、雨が降ろうとこの日この時に撮影するしかなかったのだけれど、よく考えれば小雨さんの曲なのだから、まさに小雨の天気だったというのは良くできた偶然であり、必然だったのかもしれない。

(2020.11.19) (レビュアー:大島栄二)


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review, 大島栄二

Posted by musipl