<!-- グーグルアナリスティック用のタグ -->

犬人間ニョンズ『君と本屋さん』【ひねくれがひねくれ過ぎて360度まわった結果のこのテイストなのではないだろうか】

アホっぽくて好きだ。なんだこのバンド名は。ニョンズってなんなんだろう。疑問は尽きないけれど、結論としていえるのは全体からアホっぽさが滲み出てて、そしてキライじゃない。いや、むしろ好きだ。大好きだ。ロックが本来持っている、というよりもあるべき初期衝動のカタマリがここにあるようで泣ける。そして嬉しくなってくる。

君と本屋さんというタイトルと歌詞もいい。この「君」が行きたいところがすべてなのだ。たとえそれまで本など読んだことさえないくらいであっても、「君」が本屋さんに行くのなら自分も行く。衝動だ。明確な理由を持った衝動だ。ステキだ。で、その「君」が古いマンガを買おうとしている時に、この本など読んだことなさそうな「ぼく」は寺山修司の名作を買おうとする。買っても読まないだろうな。だって詩集だぞ。でもこれは名作でインテリっぽいというチョイスが寺山修司だったんだろうな。その辺りもめっちゃリアル。アホっぽいといいつつも、そのアホっぽさはちゃんと計画されて生み出されたチョイスの集大成の結果で、冷静に考えたらそんなにアホじゃないんじゃないかとか一瞬思うけれど、そう思わせないところが彼らのすごいところだ。ロックアーチストはそうあるべき。能ある鷹は爪隠す的な、アホっぽさをちゃんと演出するくらいでなければ。30秒くらいで「新しいステレオはないけど」と歌うところで声が裏返るけれど、この裏返りもきっと演出に違いない。普通に歌うことはできる。特別に高音域ということでもないし、むしろここで声を裏返させることの方が難しい。なのに、ここで声をひっくり返らせる。このテクニック。緻密だ。「君」はやがて「あなた」に変わるし、そのあなたは高橋留美子の新刊と一緒に「へんなしおり」を手にする。そうそう、本屋のレジにはヘンなしおりが置いてある。自由にどうぞと置いてあるのでついつい手に取る。こいつ、本屋に行ったことないわけがない。日常的に本屋のレジに行ってなんか買ったりしてるし、レジの様子を良く観察してるし、慣れている。アホっぽくしてるのは絶対に演出だ。本当は理数系でバンド名も「幾何学模様」とか「三次方程式」くらいでもいいのに、敢えて「犬人間ニョンズ」にしているんじゃないか。いや、完全に妄想でしかないけど。

本屋の内部がどこなのかはわからないけれど、最後のシーンで主人公の2人が出てくるのは京都中心部烏丸三条にある大垣書店だ。隣接してるスタバでよくわかる。京都のバンドってくるりに代表されるようにちょっとひねくれたバンドが多いのが特徴で、それは京都人そのものが持っているひねくれ性質に由来するのではと勝手に考えている。そんな中、京都のバンドとしてこのアホっぽいテイストを前面に打ち出しているのは、本当のアホではなくて、京都ならではの生来のひねくれがひねくれ過ぎて360度まわった結果、まったくひねくれてなどいないアホっぽいキャラを打ち出そうということになったのではないだろうか。これも完全に妄想でしかないんだけれど、もしそうだったとすれば、やるな。ま、ひねくれなどないアホっぽいバンドだったとしても、ひねくれ過ぎてこうなったのだとしても、どっちでもいいので、本当にこの曲大好きだ。

(2020.11.20) (レビュアー:大島栄二)


ARTIST INFOMATION →


review, 大島栄二

Posted by musipl