<!-- グーグルアナリスティック用のタグ -->

成田あより『海とレモン』【すべてをバラードに変えてしまう人】

ピアノ弾き語りのバラード。夜の海を想像させるMVとともにしっとりと響いてくる。いや、このMVに海を想像させる要素ってあるんだろうか。ときどき波の映像がオーバーラップするものの、全体としてこのMVに海の要素を加えているのは曲そのものだ。そのことに後から気づく。知らないうちに意識は映像よりも音楽そのものにフォーカスしていたのだろう。バラードというのはどんなアーチストのライブでも重要ポイントで歌われるキラーチューンであることが多く、それだけ、人の心に言葉を染み入らせる力があるということなのだろう。この曲でも、成田あよりという人の言葉がいつのまにか染み入っている。

どんな人なのだろうとHPのプロフィール欄を見てもよくわからず。2016年から4年間で7枚のCDリリースをしているそうで、それはかなりの積極的な活動ぶりだけど、それだけでどんな人なのかがわかるわけではない。SNSでも驚くほどの活発な活動ということではなく、で、YouTubeチャンネルを見てみることに。オリジナルの部屋ギター弾き語りの曲と、様々なアーチストの曲を同様に部屋ギター弾き語りでカバーしている曲がずらりと並んでいる。そのどれもがバラード。オリジナルの曲がバラードなのはともかく、カバーの元曲がバラードでもないのに彼女が歌うとバラードになってて面白い。例えばSUPER BEAVER『証明』などはオリジナルと較べてまったく違った感じになっている。僕の持論だが、カバーとコピーは違っていて、オリジナルの曲のテイストそのままに引きずられてしまうのはコピーで、カバーはオリジナルの曲を使って自分のスタイルを提示すること。YouTube時代に、カバー曲を何曲も歌うことで、その元曲のアーチストのファンに聴いてもらいやすいという状況が生まれているので、多くの無名なアーチストがカバー動画に取り組んでいる。しかし、そのほとんどはカバーではなくてコピーで終わっていて、本人はカバーのつもりだろうけれど、これならオリジナルを聴くわとしか思えない動画が溢れている。その点、この成田あよりという人のカバー動画は、どんな曲も自分のバラードスタイルに引きずり込んでいる感があって面白い。そのバラード力というか、すべてを自分のものにしていく力があるから、この曲のようなオリジナルにも、リスナーに歌詞を浸透させることができているのだろう。彼女のカバー動画は本当にたくさんあって、SUPER BEAVER『証明』のようにオリジナルがロックサウンドの曲があるはいうものの、やはりオリジナルもしっとりとしたバラードを選んでいることは多くて、ちょっともったいないなという気がしないでもない。「なぜこの激しいサウンドがこんなにしっとりとしたバラードになるんだ」というような曲をもっとたくさんやると、「おおお、この人すごいな、面白いな」という感想は増えるんじゃないかなあと、ついつい余計なお世話を考えてしまう。

(2020.11.24) (レビュアー:大島栄二)


ARTIST INFOMATION →


review, 大島栄二

Posted by musipl