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本棚のモヨコ『これからのてんかい』【すべての人間の人生と同じで、至る所に青山あり】

2014年にレビューした本棚のモヨコは札幌のバンドで、その後東京に活動拠点を移し、ちょうど1年前の2019年12月に解散した。その間にボーカルのゆちよが抜け、歌声が女性から男性に変わる。それはちょっと誤解を招く表現かもしれない。ゆちよ脱退前はゆちよと森脩平の男女混声ツインボーカルのバンドでゆちよが抜けたから男性ボーカルのバンドになったというだけのこと。しかし2014年のMVを観て聴けば判るとおり、女性ボーカルのゆちよが抜けたらもはや別モノといっても過言じゃないくらいに違っている。それが理由なのかどうかは知る由もないし、バンドには表面には見えない様々な要素が関わって進むべき決断がくだされるので、その理由について部外者が1年後にどうこういうのは公平ではない。

このMVでは2019年12月半ばに行なわれたラストライブの模様をテレビの画面で流している光景が映されている。その画面を消し、「ここからは」という歌詞とともに続いている。直後に映されるのはメンバー全員によるバンド演奏シーンだ。おそらくこの曲は解散が決まってから書かれて、MVに解散ライブの模様を入れこんで年内に公開するべく準備がされていたのだろう。それをとても計画的だと評するのがいいのか、それとも未練が残ってそこから動けないと評するのがいいのか、わからない。人によって感じ方は違うだろうし、おそらくメンバー自身も明確にこうだという答えは持っていないのではないか。なので僕の個人的な推測で申し訳ないが、おそらく、長年やってきたバンドの解散という事態に冷静であろうとするけれど、冷静だと思いつつやっていることがとても後ろ向きで、ナイーブで、過去に浸っているように感じられる。曲のタイトルが『これからのてんかい』なのに、解散した日から10日あまり意識を過去に向けて集中しているわけで、解散が決まった日からこのMV公開までの期間を含めると、ずっと後ろ向きに後ろ向きに展開していて、これからのてんかいというタイトルとは真逆な感じで興味深い。後ろ向きだということは決してマイナスなことではないし、前を向くためには一度きっちりと過去を清算する必要があるものであって、だから、これはプラスに向かうために必要な反動を得るための、不可欠なマイナスということだっていえるだろう。もはやバンドのHPも消え去ってしまっているので、当時の状況だとか解散に至るまでの活動歴はよくわからず。メンバーのその後もよくわからない。

いや、わからなくてもいいのだ。しばらく活動を保留してても、またいつか活動を始める人もいるだろうし、そのままフェードアウトしてしまう人もいるだろう。ただ僕が知らないだけで、そんなに華々しくなくともすでに自分のペースで活動しているかもしれないし、本当に僕がしらないだけですでに華々しい活躍を遂げているかもしれない。華々しいからフェードアウトまで、どんな状況の可能性もあるけれど、どうだっていいのです。人それぞれの生き方があって、それがずっとやってきたことと違っていても、また同じことに取り組んでいても。それはすべての人間の人生と同じで、至る所に青山あり。ただ人生の一時期にステキな活動をして、ステキな作品を残して。それが出来る人はほんの一握りだし、多くの人にとってそうなのかは判らないけれど、少なくとも僕にとって本棚のモヨコはステキなバンドだったというだけで、いいのではないでしょうか。

少々おかしな1年となってしまった2020年がもうすぐ終わり、来る2021年はどんな年になるのでしょうか。おかしかった2020年の影響を受けて、予想もしていなかった人生に突入してしまった人も少なくないでしょう。こんなはずじゃなかった足踏みを強いられている人も、どうかお元気で。予想通りの人生じゃなくたって、また輝ける日は来るはずだし、そんなに輝かない人生も、それはそれでいいんじゃないかなあとさえ思えれば、案外うまくいくものです。

(2020.12.31) (レビュアー:大島栄二)


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Posted by musipl