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オキタユウキ『One more night』【ただただビートに支配された1分54秒の永遠】

詩的、なのに言葉が聴き取れないよう聴き取れないように歌っているかのよう。とても不思議。YouTubeの投稿には歌詞が明記されていて、だからその内容を汲み取ることができるけれど、それが無かったら最初の数行が何と言っているのかまったくわからない。かつて桑田佳祐の歌い方は言葉がわからないとかいわれたこともあったがその比ではない。桑田のそれはもともと洋楽のように歌いたいところを適当に日本語を当てはめたともいわれたしその通りだとも思うが、それとはまったく違って、しっかりとした意味があり、その上要所要所で韻を踏んでいて、それなのに、聴き取れない。だからといって聴き取れないようにルードに雑に歌っているのではなく、曲の持つテンポの速さに載せれば当然こうなるという結果であり、極めて詩的な上に、極めて音楽的なのだ。この速さがなければ焦燥感が表せないのだろうし、じゃあ言葉数を減らせばいいじゃんという提案にも、言葉を減らして意味が薄まっていいのか、意味を薄めることに意味があるのか、という当然の反論があれば何も言えなくなる。速いテンポに加わるのは比較的軽い音色の音ばかりで、ボーカルの声質も男性にしてはかなり高い声で、それらの組み合わせで明るく軽快なサウンドになるのなら解るけれど、全体に病んだ夜の闇というイメージが拭い去れず、ああ、これはとても特別な音楽なのだなあとあらためて感心する。究めて秀逸な音楽に出会ったのだなあとそのラッキーさを感じる暇も無く、ただただビートに支配された1分54秒に永遠さえ感じずにはいられない。

(2021.1.5) (レビュアー:大島栄二)


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review, 大島栄二

Posted by musipl