<!-- グーグルアナリスティック用のタグ -->

愛はズボーン『ひっくりかえす』【アホの裏に意味という貫かれた彼らのスタイル】

不思議とみなぎる高揚感。画面にはちょっとイッちゃってるような表情の4人がわりとチープなステージで歌ったり演奏したりしている映像が延々と映されるけれど、一度目をつぶって曲だけを聴いていると、やはりイッちゃってる人たちの魂が展開されているようで興味深い。歌ってることは「日常の繰り返しから脱却せよ」みたいなメッセージだと思うし、そういうメッセージを歌っているアーチストは少なくないけれど、真っ当なメッセージを伝えようとする人ほど真っ当なテンションで真面目に説くのでちょっとウザかったりする。「そうはいっても日常じゃないことやるのは勇気いるでしょ、あんたみたいにデキル人はいいけど、普通の人にはそんなの無理だよ」とか言いたくなっちゃうし、だから、そんなメッセージにまともに応える人はそんなにいない。それに較べて、この愛はズボーンのこのメッセージ、そんなに真面目に説いてない。真面目に説いてないけれど、このハイテンションというかイッちゃってるので、別のタイプのウザさがある。これを聴いて理屈で「おお、彼らの言う通りだ、日常をひっくりかえそう」と思う人はいないだろうけれど、曲が持つリズムや盛り上げテクニックで、意識はしないんだけれど高揚して何か新しい行動をついついしてしまうという人は出てくるんじゃなかろうか。途中で出てくる「Do る Do る Do る Do Do Do Do る Do る Do る Do る Do Do Do」というフレーズには、「Do(行動せよ)」というメッセージを無意識領域に刷り込む効果があるし、2分頃からの30秒に展開されてくあたり、同じような疑問形が繰り返されていくあたりはある種のお経のようでもあり、しかも8小節ごとに微妙に違うサウンドに変化していく過程で徐々に盛り上げられていって、もはや正常な判断力を押し流されていくような怒濤があるようだ。

バンド名の愛はズボーンというのは、なんてふざけた名前なんだと思うけれど、Twitterやインスタのアカウントを見ると「iwasborn」となっていて、「I was born(私は生まれた)」という意味だと知ると、おお、アホっぽく見える名前の裏に意味があるんだなあと判る。アホの裏に意味、というのはこの曲にも貫かれたひとつのスタイルだし、一度彼らの曲をじっくりと聴き込んでみたいなと思ったりする。真剣に聴くとけっこう疲れそうではあるけれど。

(2021.1.7) (レビュアー:大島栄二)


ARTIST INFOMATION →


review, 大島栄二

Posted by musipl