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高井息吹『幻のように』【ずっとずっと聴き続けられる、彼女の声の本当の良さみたいなもの】

4年ほど前に1度レビューしたことのある高井息吹。その時はライブ映像だったが、今回はMVにて。4年前のライブの曲はかなり声を張り上げるタイプで、その声の出し方と楽曲の盛上がり方のシンクロぶりがとても印象的だった。こんな掠れるような声の出し方でこんなに声を張ることができるんだと感心したのだが、それでも声の貼り方よりも歌声の独特さの方が衝撃を持っていて、当時「ナチュラルに変わった人」という表現で評していた。

今回のMVはそれとはかなり違った印象で、特に声を張る部分もなく、だから彼女特有の声質がじんわりと前面に出てきている。それがかえって高井息吹というシンガーの特徴をよく伝えているようにも思える。では、この曲だけでその特徴が伝わるのかというとそれはちょっと微妙で。というのは、他の多くの曲やアーチストの中から頭ひとつ出していけるほどのインパクトがあるのかというと、無いからだ。問題は、インパクトというのはアーチストを評価する上でどのくらいの重要度があるのかということで、まだ無名の人たちはなんとしても最初の30秒を聴いてもらう必要があるから、まずはジャンルやキャッチフレーズや奇異な衣装や髪型で目立とうとする。さもなくば大きな事務所やレーベルの力を借りて売り出してもらうということになるけれど、その大きな事務所に見出される際にもなんらかの「目立つ」ポイントを必要とする。そういう場に於いては、このMVのような曲は少々力不足になるかもしれない。しかし、だから聴く価値がないのかというとそうではないし、同時代の様々なアーチストと比べてみても特異な存在であるのは確かだし、それだけでも、多くの人が聴くべきだと思うが、とはいうものの、この曲だけではまだ弱い。4年前にこのMVを初めて見たのなら、僕はここで取り上げなかったかもしれない。それを取り上げさせたのはライブパフォーマンスでの張った歌だったのだが、もしそういう張る歌ばかりを歌っていたのなら、彼女の本当の(地味な)良さは死んでしまうだろうし、ずっとずっと聴き続けられはしないだろう。そういう点で、この曲は比較的静かで、彼女の声の本当の良さみたいなものがじんわりと響いてきて、ほどよく心地良くて癒される。

(2021.1.11) (レビュアー:大島栄二)


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review, 大島栄二, 高井息吹

Posted by musipl