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しらぬい『HERO』【歌なのか演奏なのかという葛藤の果ての傑作】

アニメMVの曲がグッとくる。YouTubeのコメント欄にも「アニソンで使われそう」といった言葉がいくつかあって、確かに使われるかもしれないなあ、使われなくても使われていいクオリティはあるよなあなどと聴きながら思う。で、どんなアーチストなんだろうとwebサイトを見てもアーチスト写真的なものはなくて、メンバーの顔などがぼかされたイメージが数点載っているのみ。ああ、これは昨今よくある顔を表に出さない系なのか。そう思って過去のMVなども見てみると、別に顔出し厳禁なんかじゃなくて、普通にメンバーが映って演奏してる。数年前とは方針が変わったのかもしれないし、このMVだけのコンセプトなのかもしれない。そんなことを考えながら聴いていると、ビジュアルをどうするかというよりももっと大きな違いがあるよなあと気づく。しらぬいというバンドは元々どちらかというとハードロック系のサウンドのバンドのようで、現在のサイトプロフィールでも「よーきの弾くギターは女性ギタリストとは思えないキレと鋭さを備えている」と書いている。キレがあるギターだったらハードロックというのも短絡なのだが、聴いていればそれがけっして間違いではないということはわかる。以前の楽曲では、比較的ハードな演奏が前に出てくる感じになっていて、歌はどちらかというとサウンドの一部という仕上がりになっている。それは歌とサウンドの関係というだけではなく、メロディの作り方や曲の構成そのものがサウンド推しになっている。それに較べこの『HERO』という曲は歌が前に前にと存在感を増すような作りで、そのため、スーッとリスナーの脳に入ってくる。歌なのか演奏なのかという問いは昔からロックバンドに突きつけられていて、歌を前に持っていくということはバンドは単なるバックバンドなのか、それじゃアイドルの後ろで演奏しているミュージシャンとなにが違うんだみたいな葛藤は誰もが経験したことだろう。だからといって演奏を前に持ってこようとすると、しかもその葛藤の末に意図的に演奏を前に持ってくるのであれば、ニュートラルに作品を良くするということにはならず、「歌より演奏が目立つから良いんだ」といった、独り善がりの表現にしかならず、独り善がりの表現が多くのリスナーに評価されることはきわめて稀で、だから、ほとんどのバンドが停滞してしまう原因となる。このしらぬいというバンドは2014年に結成したということで、そこそこの活動歴を持っている。その活動歴の中でいろいろな紆余曲折はあっただろうし、チャレンジも挫折もあったのではないだろうか。その果てに、この『HERO』のような、メロディ的にもミックス的にもしっかりと歌を前面に出しつつ、バンドサウンドを損ねることのない絶妙な作品を作り上げることに成功したのだろう。これが単なる偶然の産物であれば、次はそんなにインパクトのない曲しかできてこないだろうが、葛藤と探求と挑戦の末にこの曲に至っているのであれば、次もまた秀作を生み出し続け、バンドとして頭角を現していくのではないだろうか。期待していいと感じる。

(2021.1.21) (レビュアー:大島栄二)


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Posted by musipl