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きのこ帝国『猫とアレルギー』【芯の強さと力の弱さが同居している、特異な声】

そういえばきのこ帝国のメンバーたちは解散後になにをしているんだろうかと思い立ちググってみたら、ボーカルの佐藤千亜紀は現在レコーディングをしているそうな。彼女のホームページによれば最新のMVが2019年11月と1年ちょっと前のもので、だからそれ以来の音源を作っているということなのだろう。そのMVを見て、ああ、この人の声は信じられるなと再認識した。その曲自体は妙に素直なラブソングで、バンド時代のものとはかなり傾向が違うように感じられ、個人的には違和感があったものの、それでも静かに歌うその声は沁みるように心に浸透してくるのがわかる。

それできのこ帝国時代のMVをいろいろと見返してみて、やはりこの曲だなあと思った。なんということもないことを淡々と歌っている、メジャーデビューアルバムのタイトル曲。けっして音域が広いわけではないボーカルだし、圧力を持ったタイプの声でもない。それなのに、説得力がある。女性の心模様を、普通は内面に隠し持っているような本音を、歌にして歌ってみてもそうそう共感できるものではない。だが佐藤千亜紀の声には芯の強さと力の弱さが同居してて、数ある女性ボーカルの中でも特異な存在だ。

この曲全体にのっているストリングスの音が、この曲を支配していて、それまでのバンドとしてのサウンドとはちょっと違ったテイストを醸し出しているのだが、4:38あたりから佐藤のギターがガツンと鳴り響き始める。歌のか細さとは真逆の、野太いギターの音。いいな、ロックバンドだよなと心から思える。きのこホテルが佐藤のソロではなくバンドとして成立していたのは、やはりこのロックっぽさだったのだなあと改めて感じさせられる。

年内にもリリースされるだろう佐藤千亜紀の音源はどのようなものになるのだろうか。この曲後半のギターのようなロックっぽさがあると嬉しいのだが、それだとバンド時代をなぞるだけかもしれないし、だとしたら、そろではそういうロックなテイストは無くてもいいのかとか思ったりもする。

(2021.1.30) (レビュアー:大島栄二)


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review, きのこ帝国, 大島栄二

Posted by musipl