<!-- グーグルアナリスティック用のタグ -->

tone spoon『01』【それぞれが自分の全力を発揮するのに必死になっている】

違う種類の声質の女性ボーカルが交互に歌を重ねていく。2人の声は違うといっても共に媚びる印象が欠片もなくて、だから声が入れ替わった後も同じ心のベクトルを保ちながら、聴く者の心に刺さってくる。女性ボーカルが入れ替わり立ち替わりしながらひとつの曲を構成するというのは、この10年以上のアイドルグループの基本的なスタイルで、アイドルに注目していない人でもそういう表現に慣らされてしまっているが、そういうものとは、やはり違う。アイドルグループの歌唱が、よほど注目して繰り返し聴けば別だろうが、普通に聴いている限りではどの部分を誰が歌っているのかわからない。しかもメインで歌っている人の背景で別のメンバーも歌っているため、やっぱり特定のメンバー単独の歌として認識することが難しい。コーラス効果と僕は呼んでいるのだが、多人数で同時に歌えば、その中の誰かのミスはかき消されるし、全体の平均値さえ上げれば一部の歌唱力的マイナスも目立たなくなる。もちろん第一線で活躍しているグループはその正規メンバーになるための過酷な競争があるわけで、どうしようもないほどの酷い歌唱力の人はコーラスの一員になることさえ難しいだろうが、それでも、グループのメンバーが全員ソロシンガーとして大成できるのかというと首を傾げざるを得ない。このツイン女性ボーカルのバンドtone spoonでは、2人ということもあるが、それぞれが歌う場所をはっきりと分けているが故に、ある意味それぞれのソロシンガーという印象もあり、逃げる場所はなく、それぞれが自分の全力を発揮するのに必死になっている。それがバンドとしての真摯さにもつながっているのだろうか、曲全体から迫力という言葉がにじみだしてくる。女性ボーカルと男性楽器陣という構成のバンドはたくさんあるけれど、そういうバンドの結構多くが、男性楽器陣だけでは魅力に欠けるので女性ボーカルを利用している、そんな意図が透けて見えたりする。本人たちにそういう意識が無くとも、そう見られたら仕方ない。それは女性ボーカルもお飾りであることを容認し、男性楽器陣も自分たちだけには魅力がないのだということを容認した結果そう見えるのだ。しかし、このtone spoonの場合、女性ボーカル2人が自分こそがこのバンドを引っ張っていくのだと強い意思を持って歌っているように見える。だから、お飾りなどとはまったく感じられない。その強いボーカルに負けじと、バンドサウンドを打ち出そうと懸命に演奏しているのもよくわかる。ドラムの手数がこれでもかとめっちゃ多くて、その結果他の楽器との整合性に齟齬を生じさせているんじゃないかという心配はあるものの、無難な範囲で旧い教科書のような演奏で収めているよりはよほどバンドとしてのアグレッシブさを感じられるし、そのアグレッシブさは、彼らの今後のエネルギーになっていくんだろうとさえ思える。

(2021.2.16) (レビュアー:大島栄二)


ARTIST INFOMATION →


review, 大島栄二

Posted by musipl