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佐野仁美『Winter Magic!』【歌声を聴いたなら、良いなと誰もが振り返るのではないだろうか】

かつてのように流行りの音楽ジャンルが一定の周期で繰り返されるというのはもはやありえない。それは大きなメディアから届けられる偏った情報に頼るしかなかった時代から、アーチスト単位で発信できるようになったことが大きいし、同時にマイナーな音楽ジャンルのファンが抱えていた疎外感もSNSなどでつながれることによって解消していったということも、あらゆるジャンルが同時並行的にそれぞれの規模で盛上がれる要因だ。その結果、本当にいろいろな音楽ジャンルを探して楽しむことができる時代になったし、こんなおかしな風変わりなの誰も聴いたりしないだろうと思うようなアーチストもそこそこの盛上がってたりする。

そういう風変わりな音楽が溢れるようになると、風変わりじゃないものを聴きたくなったりするものだが、風変わりじゃない正統派というのは、言い換えればオーソドックスということでもあって、オーソドックスなものに新味は乏しいのであって、百花繚乱のネット世界で目立ったりすることはなかなか難しい。それでもスポーツの世界でいう世界新記録みたいなスーパーアスリートのようなオーソドックスさであれば目立つこともできるが、それはそんなに簡単なことではないし、以前とは違ってネット上に数十年前の音楽も新曲と同じように並んでいるのだから、オーソドックスな正統派シンガーはホイットニーヒューストンと戦わなきゃいけないみたいなことになってしまって、そこまでいかなくても広瀬香美あたりとは戦わなきゃいけないわけで、あらゆる正統派をなぎ倒して頭角を現していくというのは並大抵ではない。この佐野仁美という人の歌唱は、聴けばめっちゃ正統派で上手いことはすぐにわかる。しかもかなり高いレベルで。全編ピアノを弾いてるMVだけど、ピアノ弾き語りではなくてリズム隊とのバランスとかめっちゃ洗練されている。アマチュアでピアノ弾き語りをずっとやっている人は全体とリズムを合わせるということが苦手なことが少なくなくて、それは要するに「ノリ」とか「独自のグルーヴ」という言葉を隠れ蓑にして正しいリズムを身につけることを怠ってきたからだが、そういう人が他のリズム楽器と併せて演奏すると、リズムはなんとか合わせられても急に生気を失って、ド素人が打込みしたみたいな「機械?」といいたくなる演奏になる。が、この曲のなんと活き活きとして心踊らされることか。ホイットニーや広瀬香美とのバトルはともかく、同時代の正統派シンガーとしての戦いだったらそうそう負けないくらいのレベルだといえる。MVの再生回数はそんなに多くないし、ファンが音源を欲しいと思ってもなかなか簡単ではないようだけど、どこかのカフェでライブをやってて歌声を聴いたなら、おおっ、良いなと誰もが振り返るのではないだろうか。

(2021.3.2) (レビュアー:大島栄二)


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Posted by musipl