前野健太
 
『100年後』
 50年後の未来というのは20歳同士のカップルには十分に在り得る未来でも、35歳同士になれば平均寿命的に見て両方が生きている可能性は半分以下になる。かといって50歳同士だからといって絶対に両方死んでるかというとそうでもなく。50年というのはそういう、在るとも無いとも言い切れない微妙な時間で。だが100年後というのは基本的に自分はもうこの世にいないということを前提にした時間のことなので、そこに「待ち合わせを」というのはいったい何のことなんだろうか……
 
  (レビュアー:大島栄二)  

 
『今の時代がいちばんいいよ』
 なんということもない描写で淡々と平和というものを描こうとする。具体から具体的な固定のイメージを結ばせるのとはまた別の、具体からそれぞれの具体をそれぞれに結ばせようとする。前野健太の表現は本当に面白い。昨年末にCDではなくCD付き本という形で主に書店で販売される音源としてリリースされた最新作の、タイトル曲がこの「今の時代がいちばんいいよ」。リリース直後に買って聴いたときにはサラリと流して聴いてしまったが、今あらためて聴きなおすと……
 
  (レビュアー:大島栄二)  

 
『東京の空』
 前野健太の「東京の空」は2ndアルバム「ロマンスカー」にひっそりと収録されている。ひっそりと表現したのは、11曲目の「18の夏…」が終了してしばらくすると始まるという、隠れトラックとして収録されているからだ。2011年当時の前野健太はまだそれほど人気者というわけでもなく、このアルバムも手作り感が溢れていた。今では知名度も上がりレーベルメイトの人たちとカッチリとしたバンドでのライブを見せたりしていて、この「東京の空」も2013年のアルバムに……
 
  (レビュアー:大島栄二)  

 
『鴨川』
 歌詞がいいんです。雨が降って川になって海に向かって行く。その不可逆な変化が人間の変化になぞらえられます。僕らは成長だか堕落だかわからない変化を時の流れに任せるようにしてしまっていて、それでも僕らは生きているのです。そんなことを、初めて彼を見た京都のお寺ライブで考えてしまいました。そんな哲学的な歌詞を比較的スチャラカな性格のMCとポップなメロディに乗せる彼は一体何者なのでしょうか。ビデオの中で踊っているのは……
 
  (レビュアー:大島栄二)