あららら『さよならせかい』 Next Plus Songバンドごっこ『雨の日の恋人』

野上智子
『tonight』

 こぶしを回すわけでもなく、普通に歌うのとは違う声が出てくる瞬間にボーカルの魅力はあるのだと日頃思って生きている。それは高い声を出そうとして地声の限界に到達して、それでも高い声を出さなきゃいけないからファルセットに移行してその音域を実現するわけだが、その移行するところのひねりというべき部分のことを意味している。この移行部分が短すぎるとリスナーはその唐突感に少し不快を感じるが、一定以上の長さを保てれば移行したことにも気付かずに心地良さを感じる。特に僕は。野上智子の歌にはこの地歌声とファルセットの中間にある心地良い声がこれでもかと溢れていて、良いボーカリストに出会えたなと嬉しくなる。息継ぎをするかのように心地良い声を聴かせてくれる彼女、今月末のライブをもって一旦活動を休止するとのこと。昨今の音楽事情はなかなかに難しいものがあり、才や努力の総量に見合った福音が必ずしも保証されず、こうして歩みを止める人が出てきても仕方ない側面はあるのだが、それでも才ある人の、いや声の響きが止まるのは残念な気持ちでいっぱいになってしまう。
(2014.11.17) (レビュアー:大島栄二)
 


   
         
 


 
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