レトロ本舗『買いすぎブギ』 Next Plus SongThe Sound's Pierrer『自由に舞う鳥になりたい』

オレスカバンド
『Walk』

 同じ中学で結成したバンドが12年も続くなんて当時の本人たちは考えていただろうか。そしてこんな風に音楽性が進化していくなんて誰が想像しただろうか。そしてこの音楽性の進化は本当に進化なのだろうか、それともメタモルフォーゼなのだろうか。当初は元気でストレートでパワフルなステージを展開。当然リズムはスカ。持っている楽器がホーンセクションということが特徴の、ある意味典型的な若いバンド。それがこの曲ではホーンセクションも単に楽曲の演出を果たす道具のひとつという印象で、見る側聴く側としては正直驚くし、戸惑う。なぜか。彼女たちの特徴が失われているのではないか、骨のようなものが失われて普通のR&Bバンドになってしまっているのではないかと感じたからだ。だが、よくよく考えてみると結成以来30年も同じリズムを飽きることなく繰り返しているロートルバンドはいくらでもいて、彼らは変化せずにそこにいるというよりも、進歩せずにただただ繰り返しているだけのようにも感じられる。それとは対照的に、彼女たちは変化を恐れずに動いているのではないかという気がした。自分たちの武器が最初は目新しく効果もあっただろうが、やがて飽きられて武器にもならなくなる。だとしたら、変化しなければならない。最大の特徴でもあったホーンサウンドだけに頼るのではなく、他の視点からも十分に力として通用するような何か。それを日々探しながら此処に至っているのではないだろうか。それは一種のメタモルフォーゼであるが、単に変化したのではなく、総合的に進化したのだと思う。ホーンが前面でスカのビートを刻んでいなければならないと思い込んでいるのは旧い頭のこちらの方で、実際は時とともに音楽のシーンも変わり、そこで生き抜くためには新しい価値を生み出し続けなければならないのだろう。そうでなければ「あの人は今」で昔のヒットソングだけを歌う懐メロ歌手になるしか道は無い。そう考えてニュートラルな気持ちで対峙した時、オレスカバンドのこの曲は心に沁みる名バラードとして響いてくるのだった。
(2015.3.28) (レビュアー:大島栄二)
 


   
         
 


 
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