ポタリ『ナイショ ナイショ』 Next Plus Song荒井由美 & Hi-Fi Set『あの日にかえりたい~卒業写真』

Neleonard
『Coger Frío』

LINEで送る
 今年はあくまで小さき周囲でだが、忘年会って言葉の積極的自粛をしようというのがあって、それはまだ2016年が世の中的にも色々あり過ぎて、おそらくそれが下部構造、つまり自分たちの傍に来るだろうというのは分かってきたからこそ、もう忘年している場合じゃなく、集まるにしても、それじゃない何かにしようと提案の中、また、2017年以降のフェイズはきっと過酷な「分断」が始まってくるのだろう、との総意とともに。「分断」という言葉も、格差と似て苦手なひとつだが、政治的、経済的、自由的、国境的の後にはやはり分断が相応しいのかもしれない。

 だからこそ、年の瀬に音楽は、ポップなものを。スペインの優良レーベル〈Elephant Records〉からの男女混成のバルセロナ出身の六人組バンドのファースト・アルバムからの一曲。聴いて分かる通り、彼らの音の端々には過去への畏敬と遺産が溢れている。まるで、ギターポップ、ソフト・ロック、ネオアコ、このフレーズはザ・スミス的だな、ベル・アンド・セバスチャンみたいな曲があるな、とか、この微睡む感じはミレニアムやハーパーズ・ビザールみたいだな、とか、ブライアン・ウィルソン的意匠のゆがみと、おそらく本人たちがあまたの音楽的遺産に意識的でないと、ここまでできないだろうし、意識的過ぎると、結果、ポップソングは巷間の中で十把一からげに消費されてしまう。でも、そういった事柄を回避しているような、重苦しい現実を抜ける、音楽の風通しの良さと意志を彼らには感じた。

 この曲のMVでも真摯な演奏風景がメインでシンプルなものなのだが、観ていて、晴れやかさを感じる。歌詞はそれでいてちょっとナイーヴで、面白い。遠国のスペインで、こうして音楽を奏で、それらを世界中の誰かが観て、何かを想像してみたりできる。ネットやグローバリズムの弊害もあれども、こういうときは素直にいい時代だ、と思う。そんな部分的かもしれなくても、未来の縮図のなかに晴れやかさを帯びるように、また残りの2016年の日々がおだやかに、と深く願いながら。また、曲名のスペイン語ではないが、寒さ、風邪には追いつかれないよう。
(2016.12.9) (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))
 


  ARTIST INFOMATION →
             
 


 
 このレビューは、公開されている音源や映像を当サイトが独自に視聴し作成しているものです。アーチストの確認を受けているものではありませんので、予めご了承ください。万一アーチスト本人がご覧になり、表現などについて問題があると思われる場合は、当サイトインフォメーション宛てにメールをいただければ、修正及び削除など対応いたします。