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700レビューを超えて

  〜あらためて、レビュアーのご紹介を兼ねて〜 文=大島栄二

 先日、musipl.comのレビューが700を超えました。思い起こせば一昨年の夏に僕が「世の中には知られてないだけで素敵な音楽がたくさんあるんだぞ!それ紹介せねば!」という単純な想いで個人的に始めたサイトだったのですが、気がついたら700レビュー。searchページも最初の頃は掲載アーチスト名も少なくて「こりゃスカスカだな〜、みっともないな〜、最初だから当たり前とはいえ」と思ってましたが、今や700以上のアーチスト名が載っていて、壮観。というよりも、たくさんあり過ぎて探すの大変という状況です。時々ピックアップ特集など必要かなあと思うようにもなりました。

 というわけで、700レビューを記念し、現在レビューを寄せていただいているレビュアーを再度ご紹介し、各レビュアーの紹介した楽曲の中から私、大島が個人的に好きなものをいくつかピックアップしてみたいと思います。そういう企画です、この記事は。



松浦達氏〜洗練された文章の人〜

 松浦さんは音楽評論家としても既に活躍している人で、いろいろな大物アーチストのインタビューなども手掛けるかと思えば、海外のマニアックなミュージシャンとの交流もあり、多彩な人です。でも松浦さんの最大の特徴はその洗練された文章じゃないでしょうか。一見難しい文章でもありますが、ちゃんと読めば難しいだけの文章でないことはよくわかります。難しい文章を書く人の中には、自分を偉く見せたいがためにわざわざ難しく書いているだけという人も多くて、そういう人の文章を見ると「もうちょっと平易に書けるでしょコレ」と突っ込みたくなりますが、松浦さんの文章はそういう見かけだけ難解な文章とは対極にあるといえるでしょう。

 それでは松浦さんのレビューから、いくつか振り返ってみましょう。

  (※各曲の画面写真をクリックすると、その曲のレビューに飛ぶことができます。)



ドレスコーズ『ゴッホ』

 松浦さんが最初に寄せてくれたレビューは志磨遼平のモノローグから始まる、ある意味キッチュなビデオ。しかしその直後に始まるメロディは明らかにおおらかで希望に溢れた豊かな歌モノで、松浦さんがこのmusiplというサイトをどのように見ているのかをそのまま表してくれているセレクトだなと感じたのです。マニアックなものにはまっていくのではなく、だけど隘路に咲く名もなき花にも心を寄せてという、そんな新たな決意を感じさせてもらった、そんな気付きの1曲でした。自分のやっていることを誤解する人は多いけれども、自分以上に理解してくれる人もいるのだと勇気づけられました。多くのアーチストが松浦さんに信頼を寄せるのも、きっとそういうところなんじゃないかなあと思います。



MOCCA『Imaginary Girlfriend』

 仕事柄世界を旅することも多い松浦さんがインドネシアのポップミュージックを紹介してくれた1曲。とてもポップでキュートな歌に一気に心が温まったものです。その国ではヒットしてても国境を越えるとたちまち知られなくなる曲があるというのはちょっとだけ目がウロコで、それはライブハウスの中でだけ知られている曲がドアを一歩外に出るとまったく知られていないというインディーズミュージックにも通じます。知らないというのは罪ではないけれど、知らないことで失っている楽しみというのはまだまだあるなあと思います。日本のインディーズバンドだったら「そんなの、売れないアマチュアだろ」と言い放つことも出来るかもしれませんが、海外のスターに対して「そんなの〜」というのは自分のアホさを露呈するだけですものね。まあそんなこと関係なく、いい曲です。



米津玄師『Flowerwall』

 ネット時代の新しいスターといえる米津玄師。それをさらりと紹介する松浦さんは、アーチストの知名度的な大きさ小ささに関係なく斬り込んでいく自由さがあると思います。何故この曲が、アーチストが、今の時代に登場するのか、求められるのかということを文化や経済、そして社会とも絡めながら伝えようとするところが面白いところだと思います。2015年の1月にこのレビューを寄せた松浦さんの個人的な事情などを知っている立場から読むと、このレビューに込められた彼の希望や想いというものが透けてきてグッときたわけですが、そういうことを無しに読んでみても、重層的な想いを馳せさせてくれるという、文章そのものの面白さを感じます。



Polar M『Darkblue Sky』

 京都で学生時代を過ごした松浦さんは、京都という街とそこが生み出す音楽というものにもとてもこだわりがあるようで、京都のアーチストを紹介してくれることも多かったです。このPolar Mもまた京都を拠点に活動をしているアーチスト。確かに京都のアーチストというのは個性的な人が多く、それは人口にしてはライブハウスが多かったり、また中古アナログレコード屋がものすごく多いということとも関係しているのかもしれません。そのPolar Mを例えるに「アイスランドのムーム、または、ノルウェーのロイクソップ」といったあたりを引き合いに出してくるあたりにも、松浦さんの引き出しの多さを感じざるを得ません。そうか鴨川の映像を幻想的に映すこの京都の音楽と北欧の音楽には共通な何かがあるのか〜と、不思議な感慨に浸りつつ、またロイクソップを聴き直してみようかという衝動に駆られました。




北沢東京氏〜音楽を面白がる天才〜

 
 

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