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みたに
『空の向こう』

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 生きるということは突き詰めてしまえば1人きりの行為に過ぎない。どんなに家族に恵まれていても、惜しまれたとしても、死ぬ時は1人で逝くしかありえないからだ。だが、では、本当に1人で生きていけるのかといわれれば、そんな自信は無い。誰ともつながらなければ人間なんて動物は日々の食糧にもたちまち困窮するだろうし、まあ食うことができたとしても、言葉を交わさずに70年80年、いや、7年や8年でさえ生きていくことは出来ないと思う。他人と交流するというのは一種の麻薬のようなもので、その味を知らなければもっと人間は幸せにいられただろうに、中毒性のある交流なんぞ知るものだから、そこから抜け出すことが出来ないし、無理に断とうとすると、禁断症状から精神が壊れることを避けられなくなってしまう。この曲で主人公は「君」への想いを静かに一歩離れたところから語りかける。その言葉は、語りかけでありながらその「君」の耳に言葉として届くことは無いように思われる。交流とはそんなもので、所詮1人きりの人生で、他者と完全に理解しあうことは難しく、理解したと思うことも実は自分の脳の中で勝手に考える錯覚であり、だから、こちらから伝えたいと思う何かも、言葉のような曖昧な何かで、それが音として伝わることを期待して発するものの、届いたと確信することさえ実は自分の勝手な思い込みに過ぎなかったりする。たとえ届いたとしても、それがこちらの意図する内容として理解されることは、実は稀だったりする。だったら、もういっそ届かない声を届けたふりをして、自分だけで満足していた方がいいのではないのかと思うこともあるが、それがふりだとわかってしまったら、やはり満足できないのだろう。だって、人は本当に1人では生きていけない動物でしかないのだから。この歌を歌うみたにという女性ボーカルは、現在あおしぐれというユニットで活動しているそうで、HPを見るとそのことは判るものの、じゃあどんな人たちなのかは一向に沁み出してこない。だがそれは多くのバンドHPが伝えよう伝えようという熱意ばかりが先行して結局「情報」しか伝わらないのとはちょっと違っていて、情報のみを載せることで「感情」や「スタンス」のようなものを伝えているようにも感じられる。そのスタンスがとてもクールで、業界人的な惰性で言えば、もっと伝えれば良いのにと思うが、音楽ファンの感性としては、このくらいで十分だという気もする。あまりにクールなスタンスによる音楽活動はともすればガツガツした人たちの中で埋もれてしまいやすく、その点は心配もするのだが、ライブの本数を見るとかなり激烈にやっているようなので、その部分の積極さが彼女たちの何かを後押しして多くの人に音楽が届けばいいなと思ったりする。
 あ、この動画は始まって30秒ほどが無音です。なので30秒あたりから再生されるようにしてますけど、最初の30秒間も絵として美しいので、曲を聴いて気になった人は「ここ」から飛んで、全編を最初からご覧ください。
(2015.10.16) (レビュアー:大島栄二)
 


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