中塚武『JAPANESE BOY』 Next Plus SongThe Regrettes『Hot』

Thundercat
『Them Changes』

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 年初から矢継ぎ早に世界中で起きる多くの現実の憂いごととはまったく別途で、音楽は煌めきを増していたりする。そのひとつたる、今年の重要作になるだろうサンダーキャットの『Drunk』は特筆してもあまりあるほどの甘美でとろけそうな感覚があり、ファンタジックな側面も内在している。スペーシーなエレクトリック・サウンド、サニーサイド・ソウルからドゥーワップ。そういえば、マーヴィン・ゲイ『ホワッツ・ゴーイン・オン』、カーティス・メイフィールド『ゼアーズ・ノー・プレイス・ライク・アメリカ・トゥデイ』はどういった背景で生まれてきた作品だったのか熟考せずにしても、フライング・ロータスを筆頭に、ケンドリック・ラマー、カマシ・ワシントンとの共振、もはや、「世代」として越えなければならないだろうアーティストとつながりの並列時間は当然ながらも、現代に於けるブラックミュージック・ムーヴメントの旗手のひとりとしてサンダーキャットは連想的に且つ映画的に、アルバムを創ったといえる。

 この単曲をもっと引き延ばしたアンビエントなもので心地良くまどろみたいな、と思った矢先に次の曲に進む。(注:そういった要請に応じるように彼の曲は、世界中の個々で多様な解釈がなされていて、それがまた面白い。)シリアスな瀬における膨大なチャネル選択権を聴き手や参加者に「強制」するのではなく、「共生」のために、という文脈を端々でおぼえながら、不意にステレオラブ、ハイラマズ、ベックのような音響の細部に凝ったサウンドがこぼれ、エレクトリック・ファンクのなかに五感が刺激されるような曲もあって、またはサイケデリックな音のうねりに持っていかれもする。総体的熱量は高くも、蒸化しない。そこには彼のプロセスをめぐるインスピレーションや知性、感性が即時反映されていて、勿論、巧みなベースラインも活きているからと言えながら、だからこそ、疲れることなく、そのまま音楽のなかに寄りかかる事ができる。

 オーディオとしては多くのところで本アルバムの各曲は聴くことができるが、MVとなると、2015年のEPに入り、このアルバムでもいいポジションにある、この『Them Changes』を。甲冑、モノトーン、ファンクネス。日々変わり往くシビアな政治的な季節のなかで、軽快に音の政治性を確かめるアーティストの意地をペーソス込みに示している。そして、同時代を生きているなによりの醍醐味を感じられる。
(2017.3.7) (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))
 


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