Elomaticmill『Satellite』 Next Plus SongShobaleader One『Journey To Reedham』

MONO NO AWARE
『井戸育ち』

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 今年明けてほぼすぐにこのMVが発表されてから、何かの折、観たくなってしまう。このバンドそのものが持つ絶妙な肩の力の抜け具合がフィットしたというのと、現代版の小田実『何でも見てやろう』な質感が映像内に圧縮されているような、イギリス、イタリア、フランス、ドイツ、トルコ、タイ、カンボジア、台湾など世界8ヶ国の紀行の断片群に、中途の舞踏場面や雪で戯れるシーンまでの温度差がのびやかで、几帳面に自らの既得を既得のままでねじ伏せようとする、いわゆる、行く手をふさぐ先人たちの高圧から抜け出るような雰囲気が興味深かった。とともに、向こうみずな、若さの特権がいかにもな厭世や悲観主義な色合いを濃く感じさせず、重苦しい時代のムードに楯突く挑発性と刹那的でバンド名のとおりな、うつろうさまに魅惑をおぼえたのも大きい。
 「凱旋門の鬼ごっこは可らしい そんなんもうバカらしいって考えもバカらしい」と始まる冒頭からクールで、肯定、否定、さらにそれを相対するような循環は哲学的な脚力を補強する。また音楽語彙の振り幅の面白さが拙さとともに越えてくる。私的に、この曲だと、例えば、ペイヴメント『クルーキッド・レイン』、ザ・ストロークス『ルーム・オン・ファイア』を聴いたときのあの調性感覚が少し外れる心地良さの内側で、和趣な詩情がムーンライダーズ、青山陽一の諸作に通じる日本語詩と攪拌されながら、今の瀬ゆえの情緒も鏡面化してくる。井の中の蛙大海を知らず、しかし、空の深さを知るのは誰なのだろうかということで、どうにもこの窮屈でときに平板な世界の視角を少しずつでも、ずらしていってほしいと思う。
(2017.3.14) (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))
 


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