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アフターアワーズ
『ニュータウン』

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 切ない歌というのは華々しくない方が良い。と思う。切ない歌を聴きたくなるのはきっと自分の気持ちも切ないときだから、そんな時に華々しいアーチストの歌う切ない歌は本当に心にフィットするのだろうか。もちろんB'z稲葉が歌う切ない歌だってあるだろうし、清志郎の多摩蘭坂はグッとくるしサザンのいとしのエリーだっていいよな。でも、ヒマワリに励まされるよりはひなげしにそばにいてもらう方が良かったりするように、僕は、名もない切ない歌をこっそり大切にしたい。アフターアワーズのこの曲はそういうのに本当にピッタリ。タイトルの『ニュータウン』というのがまたいい。すでに「ニュー」という言葉が切ない。過去の誰かがそこに新しい何かへの希望を託すように名付けた想いが呪いのように染み付いた「ニュー」。寂れたニュータウンに暮らすやり切れなさ。都心の過疎。歌の出だしから歌声のパワーをセーブすることなく、かといってシャウトするというほどでもない声の張り方。その微妙さがいい。AメロもBメロもサビも一切変わることのない熱量で進んでいく歌。それはあたかも夜も昼も変わらないテンションで回って行くニュータウンというものの暮らしを象徴しているようだ。この曲はいかにも心を締め付けようとか泣かせようとかいう意図が演出として組み込まれていたりしないから、流して聴いてしまえばそんなに切なさを感じたりはしないかもしれない。だからこれが切ない歌だと感じない人もいるかもしれない。だから、これは切ない時に選んで聴く歌ではないのかもしれない。だが、これは切ない歌なのだ。切ない人が自分の感情は切ないのだと気づいていない時に、あなたのそれは切ないという心持ちですよと教えてくれるような、そんな歌。ただそばに寄り添って、切なさを感じなくてもいい人には気づかれることもなく、必要としている人にだけ届く歌。そんな歌を、心の引き出しに取っておくということは、生き難い時代を生きる上で大切なことだという気がする。
(2018.4.23) (レビュアー:大島栄二)
 


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