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THE NOVEMBERS
『みんな急いでいる』

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 これは、一種の文明批判なのだろう。何かを批判しようとするとつい自分は正しいと彼岸から声を荒げて批判対象を罵るのが普通だが、この曲は静かに、対象を客観的に観察しながらも同時に此岸にいて、自ら属する文明の愚かさを嘆く。それはあたかも自分のために涙を流している者のようで優しさに満ちあふれている。MVの中にハシビロコウが凛と立っている姿が映し出される。そのたたずまいはまるで神のように高貴で、涙する批判者に「どうすることも出来ないのだよ」と言い渡しているようにも見える。それと交互に映されるボーカル小林祐介の無感情な表情。以前レビューした『今日も生きたね』では優しくもアイロニカルな表現をしたが、それは現状の世界そのものを批判するのではなく、むしろ肯定するものだった。批判されているのはその現状を見る心の歪みの方で。だがこの『みんな急いでいる』では同様に優しさに包まれた表現でありながらも、現状の世界そのものを批判している。その世界で抗えずどうすることも出来ない心を肯定して、世界そのものが批判される。この4年ほどの間に、彼らが変化したのか、それとも世界そのものが変化したのか。表現の手法として取られる優しさは変わらない。声を荒げて他者を罵るのは一種の自己防衛で、THE NOVEMBERSはそのやり方は採らない。それは本当に高度な表現であり文明批判だと感心する。だが、聴けば聴くほど批判する対象が変わってきているのではないかと思わずにいられないし、そのことが、今を生きる人間として不安にさえ感じずにいられないのだ。
(2018.8.3) (レビュアー:大島栄二)
 


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