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MAGIC OF LiFE
『PHANTOM』

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 声についつい耳が止まる。この声はどうやって出されているんだろうか。全編ファルセットのような声。さすがに中低音域ではファルセットではないけれども、もしかすると中低音域のこの声も実はファルセットで、地声はまた別にあるのではないのかと思ってしまう。思ってしまうというより、きっとそうだと密かに確信している。中低音域と言っているけれども中音域のほとんどの部分でファルセット。いや、もうこれがファルセットなのかどうかもよくわからないというレベルで、聴けば聴くほど混乱してくる。サビでコーラスがバシバシ入ってきて、そこも含めてもうファルセット地獄。いやいや、地獄じゃないですね。ファルセット天国。天国でも地獄でもどっちでもいいけど、ああ、ファルセット洪水とでもいった方がいいのだろうか。よくわからない。で、この声がとても心地良い。この声を聴きたくて過去曲を漁る。聴き込んでいくうちに声の先にあるものが沁みてくる。そうか、この声の物理的な心地良さも大きいけれども、その声で伝えようとしているものそのものが心地良いんだと初めて解る。同じ言葉や感情を表している曲はいくつもある。だがそのどれもが心地良さを生んでいるかというとそうではない。いやむしろ心地良い曲は極々限られている。気分悪くなる曲のほとんどは押し付けようとする。自分はこんなんだぞと主張している。そのこんなんを受け入れろと押し付ける。曲に限らず普通の人間関係でも押し付ける情は苦しいだけで、その目指すところはあなた自身の満足なんじゃないですかと問いたくなるし、問うのも虚しい。それに較べて自分はこうなんです、ただそうなんですと打ち明ける表明はただそこにあるだけで、押し付けがましくなくて、こちらがそれを見聞きすることも無視することも自由で、だから嫌じゃない。例えていうならば学校に行きたくないと打ち明けた時に「なんで? 熱でもあるの? ないの。じゃあ行こうよ。学校楽しいじゃない。行った方がいいよ、将来後悔するよ」と諭してくるのと、「そう、学校行きたくないんだ。じゃあ今日は休んで、明日行きたくなったら行けばいいし、明日も行きたくなかったら休めばいいんじゃない」とそのまま受け止めるのと、そんな違いだ。MAGIC OF LiFEの曲は全部そんな感じの受け止めのようなテイストで、聴いていて心地良い。そしてその心地良さが声の特徴のずっと向こうの方に佇んでいるような奥ゆかしさがあって、やはり心地良いのだ。
(2018.8.31) (レビュアー:大島栄二)
 


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