808 State『Tokyo Tokyo』 Next Plus Song東京初期衝動『ロックン・ロール』

Salty Tongue
『世界の真ん中で』

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 単純に楽しそう。おお、バンドって楽しいものだったんだよなということを思い出させてくれる。演奏テクニックに秀でているということもなく、ただただガチャガチャと楽器を鳴らしていて、多少のボイトレもやってないだろって感じの地声ボーカルで、何らかのオーディションに挑戦しても1次であっさりと落ちそうな感じではあるけれど、そんなの関係ないぜって雰囲気にあふれてて、イイ。映像の中で自販で買ったコーラがいきなり泡まみれで吹き出して笑ってる。歌詞では「別に話せるような想い出もないしな」と歌う。そう、彼らは何も持っていないんだ。それなのにこの楽しさ。純粋に単純に楽しそう。こういうの、本当にイイ。そりゃあテクニックに裏付けされたスーパー演奏と超絶オクターブのシャウトを聴きたいさ。哲学者も逃げていくような人生観を吐露してるような歌詞を聴きたいさ。でも音楽ってそんなのだけじゃつまらない。音を楽しむと書いて音楽なんだし、楽しい気分にさせてもらえないとつまらない。そのためにはバンド自身が楽しそうにしててくれないと、無理じゃないって思う。その点このバンドはいいよ。他人の目なんて気にしてない感じがとても良い。安っぽいTシャツ着てて、ドラマーなんてジーンズにインしてて。でもそんなの一切気にしてないぜって感じがイイ。MV冒頭で、ボーカルが交差点の真ん中で立って歌ってて、信号待ちしてると思われる車が停まってて。赤になったからサッと交差点に向かって1フレーズを歌う。すぐに信号が変わって、逃げるように交差点から走り去る姿が思い浮かぶ。その一瞬の撮影で「世界の真ん中で〜」と歌ってるのが面白い、というか可愛らしい。そしてなによりもバンド名がSalty Tongueで、これ要するに「タン塩」ってことか。バンド名としてめっちゃ面白い。「オレたちはタン塩で〜す!」ってことだろ、めっちゃ良い。もしかするとこのレビューを「ディスってるんですか?」と誤解されそうだが、そうじゃない。歌詞をよく聴いてみればわかるが、彼らは「世界の真ん中をここにするから/正解なんて無い自分の信じた方向へ」と歌っている。つまり、誰かの基準なんてどうでも良くて、今自分が信じられる価値に基づいて、その中心で堂々と歌ってやるぜと宣言しているのがこの曲なのである。だから一般の価値観ではどう思われるか知らんけど、自分はこれが信じられるものであり、それを堂々と楽しそうに幸せそうに歌ってやるんだというのが、このMVのテーマなんだろう。彼らが彼ら独自の基準で楽しそうに生きている姿こそが、多くのはみ出し者にとっても福音となるのではないだろうか。名曲だ。
(2019.10.10) (レビュアー:大島栄二)
 


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