2015年のmusipl.comでの8月アクセス数上位10レビューはこちら!

 
1位 夕焼けアフロ
『おかえり』
 家に帰って灯りが点いているとホッとする。それはよくいわれることだが、じゃあ灯りが点いてさえいればいいのなら出かける時に電気を消さずに出ればいい。それで本当に帰宅してホッとできるのかというと、多分それは違うだろう。迎えてくれる何かがあるということが、その言説の意味なのであって、灯りが点いているかどうかは単なる比喩に過ぎない。どこかに出かけて、それは夜には帰る仕事でもいいし… (レビュアー:大島栄二)
 

 
2位 ヒナタミユ
『普通の毎日』
 高音競争をするような一部のそしてかなり大部分のボーカルの人たちの声が薄っぺらいなあと思うのは、こういう声の歌の人に出会うときです。この人の高音はかなり早い段階からファルセットのような感じがニュアンスとして混ざってきて、いや、ファルセットっていうのは裏声的な仮声のことだから通常の声とは切り替わった後の声のことだよなあと思ってついついググって確かめてみたりもするのだけれど正解は… (レビュアー:大島栄二)
 

 
3位 稲垣淳一
『中年男のつぶやき〜会社編〜』
 週の初めから、月の初めから、こんな曲を聴くとみんな仕事に行きたくなくなってしまうのではないかという心配はあるのだけれど、そんなダークで憂鬱なテーマをポップでファンクで飄々と表現し、かといって過度に現実逃避で無理矢理な明るさなどに行くのではなく、リアルな感情の吐露として聴かせてくれるのは、稲垣淳一の非凡で奇才であることの証だろう。実際にサラリーマン生活ン十年という40代男が… (レビュアー:大島栄二)
 

 
4位 エスクレッソン
『8月』
 本当は線が細そうな声でシャウトするという表現には決意のような強い意思を感じてしまう。それはチャットモンチーが出てきた時にも感じたことで、この無名なバンドの歌表現にも強い意思を感じてしまう。本当のことをいうと、そこに強い意思があるのかないのかは実はあまり関係なくて、結果として聴こえた時にリスナーが感じられるかどうかだけが重要。こういう声はまず女性ボーカルであるということが必須の条件だと思う… (レビュアー:大島栄二)
 

 
5位 Primula
『Aquarius』
 『My 1st Time EP』がiTunes エレクトロニックチャートで 1 位を記録した エレクトロニカシーンの異端児・Primula(プリムラ)さん。夏になったらPrimulaさんのレビューを書こうと前から決めていたのですが、遂にそういう季節になりましたのでご紹介します!なんで夏に紹介したかったかというと、夏ってなんというか、露出も多くなるせいか、恥ずかしさが半減するじゃないですか。そう、つまり率直に言うと… (レビュアー:本田みちよ)
 

 
6位 前田和亮
『僕は君に恋をする』
 なんだよそんなに想っているんだったら好きなんだったら言っちゃえよ伝えちゃえよ告っちゃえよと思うが、恋をするなんていうのはその気持ちを伝えられないというのが実際のところで、それを否定してしまったらほとんどのラブソングも恋愛小説も成立はしないのだろう。この曲のメロディは実に秀逸だし展開も豊かだし、数回聴いたら頭に定着してしまう。冒頭に書いたようなもどかしさは僕の本心だし、だから… (レビュアー:大島栄二)
 

 
7位 Flare (a.k.a. KEN ISHII)
『Transition』
 Flare名義の作品はKen Ishii名義にはない実験的というか挑戦的な試みが多く感じられ、それは謂わば、Ken Ishiiの本質が見えるようで、聴くと泉のようにイメージが湧き上がる。そのためかFlare名義で作られた楽曲はテレビのニュースやバラエティ、 ラジオ番組のBGMなどのメディアで耳にする機会が非常に多い。そんなFlareですが、この度、新アルバム「Leaps」を発表されました。この作品はCDのみのリリースで… (レビュアー:本田みちよ)
 

 
8位 ハイとローの気分
『PENGUIN DESTRUCTION』
 女の子が軽いトーンでさらりと歌う。でもこれは本人たちによればゆるふわ終末ポップバンドなのだそうだ。終末というのはこの世の終わりのことなのだろうか。歌詞の中でも主人公は終末の様子を夢に見る。核戦争が起こり北海道の隅っこで1人で立っている姿。そのディストピア感の原因は誰もいないから退屈だということ。直後に夢から覚めて現実が襲ってくる。現実の日常が戻ってきて良かったのかというと… (レビュアー:大島栄二)
 

 
9位 group_inou
『EYE』
 Googleマップは電車の乗換えを調べるしか使ってなかったけど、久々にカイロタワーや死海の衛星写真を見たら、すごいキレイになってるのね。以前は撮影されたコンディションがバラバラで、パッチワークの様だったけど。今は都市部なら街並みの上空に迫っても、複数写真の貼り合わせが解らないほど見事なバーチャル空間。ストリートビューに関しては、まだ貼り合わせ箇所が目立つけど、それも数年後にはズレも… (レビュアー:北沢東京)
 

 
10位 iTuca
『例えば』
 力強い歌だ。つらい人にただ「大丈夫だよ」と声をかけるメッセージソングは多いが、これはつらい人に「そこから逃げるのか」と問いかけるメッセージソング。僕はその方が、厳しいけれども本当に優しい声援なのだろうと思う。メッセージを必要としているのはこのビデオに描かれている、おそらく営業のサラリーマンのような普通の暮らしの中にたくさんあって、車を運転する青年が曲を聴きながら徐々に… (レビュアー:大島栄二)
 

 
次点 yonige
『アボカド』
 バンド名がどんどん変な方向に行くのは、やはり検索してもらってナンボという考えが浸透しているからでしょう。昔だったらそれバンド名なのかと思うような、文章ですかというようなバンドもたくさん出てきて、じゃあかえって短いバンド名の方が目立つんじゃないのと思ったりもするけれども、短くてありふれた名前であれば、やっぱり検索で引っ掛からなくてソンだったりします。そりゃそうでしょう、…  (レビュアー:大島栄二)
 

 
編集長コメント

1位 夕焼けアフロ『おかえり』:とても切なくて、とても暖かくて、とても癒される歌が1位にランクイン。個人的に大好きで大好きでたまらないステキな歌が多くの人に聴かれたのだとしたら、それはやっぱり嬉しい出来事です。ありがとうございます。

2位 ヒナタミユ『普通の毎日』:レビュー公開とほぼ同時にヒナタさんご本人に気付いてもらい、リツイートしてもらい、そういうのがアクセス増加につながりましたでしょうか。2位にランクイン。そういうアーチストの地道な気付きって、大事ですね。もちろん、その気付きから連鎖する、ファンたちの存在が前提なのですけど。この曲を聴けば、ファンになりたくなるのは止めようもないことかもしれません。

3位 稲垣淳一『中年男のつぶやき〜会社編〜』:3ヶ月連続のランクイン、1位→2位→3位と下げてはいるもののトップ3を堅持しているとは、やはり月曜日には会社に行きたくない病が全国で沸き起こっているのでしょう。仕方ありませんね。夏は誰だって休みたいですものね。

4位 エスクレッソン『8月』:まだ始まったばかりといってもいい無名なバンドが4位にランクイン。こういうのがmusipl.comの面白いところだと思います。ちゃんと活動を続けてくれれば大きくなれるんじゃないかとは思いますが、若いバンドは突然止まったりしますから、温かく見守っていきたいものではあります。

5位 Primula『Aquarius』:本田さん紹介のPrimulaが先月に続いてランクイン。7月終わりに紹介して7月のランクにも入っていたので、時期が月をまたがなければもっと上位だったかもしれません。7月最終週からの1ヶ月で集計すると3位ですもの。申し訳ない気持ちもありますが、ランキングとはそういうものですので、ご了承ください。そういうわけで、今月もPrimulaさんのファンタスティックなサウンドをお楽しみください。

9位 group_inou『EYE』:北沢東京さんが紹介したgroup_inouが9位にランクイン。北沢東京さんの紹介する音楽は毎回とてもユニークで、もうユニークを超えて「これ、何?」というくらいだったりもしますが、彼の音楽への見方というのはとても参考になるというか、勉強になります。そんな北沢東京さんが紹介する中ではかなりポップで王道のような音楽。そしてビデオがユニーク。面白かったです。

 そんな感じの2015年8月、みなさんいかがでしたか。今年も残すところあと1/3です。といっても1/3もあるのだから、まだいろいろできますね。楽しんで日々をお過ごしください。

(大島栄二)