2017年のmusipl.comでの11月アクセス数上位10レビューはこちら!


 
1位 secondrate
『回想電車』
 普通に泣く。泣くよな。別れることになった彼女を駅まで送っていってそこでお別れで、別れを惜しみ哀しむ男の側の歌。なんでこんなことになったんだろうと苦しい胸の内を吐露する男。でも歌詞をよく読むとこんなことになったのは男の側の優柔不断というか、自分勝手なポイントがそこここに滲み出ている。2番では同じ別れのシーンを女性の側から歌っていて、そこに溢れる未練を断ち切る強い意思。この違いは一体… (レビュアー:大島栄二)
 

 
2位 Shing02
『Time Travel Guide』
 「東アジア文化都市2017京都」のプロモーションとしてShing02を招き、京都を拠点に活動する気鋭のアーティストたちやお寺や京都タワーなどが協力しできたこの映像と曲も公開されてからそういった文化プロジェクトの一環としてのみならず興味深く何度も観返すことがあった。再生回数ほどこの10月でも然程はないが、これを機会に改めて紹介しておきたいと思う。観ていただければ一目瞭然だが、“いわゆる、京都“の… (レビュアー:松浦 達
 

 
3位 キリンジ
『エイリアンズ』
 まだ、2017年も終わっていないままに、何かしらあまたの報道の偏向に対して、あたかもエイリアンズな気持ちになることが増えすぎておかしくなりそうで、少しばかり彼らについての自身が知っていることを書こうと思う。私事はいいにしても、世事はこうも急速に緊縮していかないといけないのだろうか、というのは(国境)線沿いのふとした感慨なのかもしれず、その線の上に。そこに押されるスタンプはもはやある種の… (レビュアー:松浦 達
 

 
4位 長靴をはいた猫
『勿忘草』
 なんかスゴイなこの情念の固まりって感じの曲。シンプルな言葉が連なる歌詞の破壊力というか、こんなに想われるとちょっとキツいなという感じもあるが、じゃあ本気の好きっていうのは概ねこんな感じのはずで、そういう意味では情念の固まりというよりは、ピュアなLOVEとはこういうものなのかもしれない。そういうピュアな歌をどういう声と演奏がさらにピュアに聴かせるのかと考えていくと… (レビュアー:大島栄二)
 

 
5位 ネクライトーキー
『タイフー!』
 台風が日本を横断していったのがつい数週間前。直撃したところ、ぜんぜん擦りもしなかったところ、いろいろあるでしょうが、僕のところは息子の運動会が中止になりました。いやそんな程度のことなら翌週やればいいだけのことで、亡くなった方やそのご家族、農業被害を受けた人たちのご苦労を考えたら…。そんな中(?)こういうタイフーという歌、どうなんでしょうか。僕は、、、イイと思います… (レビュアー:大島栄二)
 

 
6位 ザ・クロマニヨンズ
『どん底』
 今の若い人はザ・クロマニヨンズのことをどんな風に感じるんだろうか。若い頃にブルーハーツに接した人たち(今は完全に中年)はクロマニヨンズに当時のブルハのイメージを当然重ねるだろうし、そのイメージを持って聴くのと、今の10代から20歳くらいまでの人が聴くのでは、多分、まったく違った音楽に聴こえるんじゃないだろうか。このどん底という曲、とてもシンプルで、ひねりもまったく無いように感じる… (レビュアー:大島栄二)
 

 
7位 白い朝に咲く
『日々の泡』
 切り裂くような声。こういう声は、自我がやむにやまれず噴火のように表面に出ていく、その時の勢いのようなものを積み重ねるなかで形成されていく声なのだろうと思う。内面を表に出さず抱え込む人には獲得できない、ましてやたいした内面を持たない人であれば絶対に到達することのない声、なのだろうと思う。それは声に限った話ではなく、サウンドも同じことで。こういうバンドと一緒に仕事をするのはきっと… (レビュアー:大島栄二)
 

 
8位 LINE wanna be Anchors
『人生』
 多くの若者が不安を抱えているように、きっと彼らも不安を抱えながら音楽に賭けているのだろう。イントロでミドルテンポなアカペラのようなスタートを切ったこの歌が、1フレーズ終わったあとから急激にテンポアップしていく。その勢いがたたみかけるように1曲を駆け抜けていく。全編でわずか3分37秒。余計なものを削ぎ落として背骨と心臓だけにしてしまったような曲なのに、繰り返されるフレーズがある… (レビュアー:大島栄二)
 

 
9位 BRADIO
『LA PA PARADISE』
 おお、このファンクというかディスコというかモータウンというか、軽快なサウンドと歌唱すごいねと思うけど、じゃあこのBRADIOがファンクなディスコなモータウンなバンドなのかというとまったく違う(違うと断言するのもちょっと違うが)。どロック(この言い方もヘンだね)な曲の方がどちらかというと多いし、それでもこんなファンクなディスコなモータウンな曲をそつなくこなす、この曲だけを聴いた人は… (レビュアー:大島栄二)
 

 
10位 Ribet towns
『メトロ』
 アイリッシュな雰囲気のするギターのストロークがとても可愛くて、楽曲は終始祝祭の雰囲気に包まれているようだ。歌われているのは地下鉄に乗って人に会いに行く、その中での出来事がいくつか。ただの地下鉄なのに、地底人が出てきそうだなんてまた可愛らしい。今どき地下鉄のホームに向かって降りて行くだけでそんなメルヘンなことを考えることはなかなか難しい。地下鉄が最初に出来た時に初めて階段を降りていった人は… (レビュアー:大島栄二)
 

 
次点 スキッツォイドマン
『ギロチンX』
 カッコいい。イントロから盛上がるフレーズの連打、そこからフレンチポップスかと錯覚する展開、シャッフルするリズム、そしてこの個性的なメンバーの暴れたり落ち着いたりというテンションのギャップ。意味など無いように思われる歌が「首から上が無い方が生きていくには楽なんだ」というシニカルでアイロニカルな言葉をぶつけてくる。首がなければ死ぬのだが、その首が無い方が生き易いとはまあなんと… (レビュアー:大島栄二)
 

 
編集長コメント

1位 secondrate『回想電車』:男の側の勝手なロジックで悲しんでいる別れの歌が11月の第1位に。男の弱さと女の強さが描かれているよなあ的なことを書いたところ、メンバー自身がチェックしてくださったようで、「そういう解釈もあるのかあ〜」みたいなツイートをしてもらいました。解釈は人によっていろいろある訳で、だから表現をするのも表現を鑑賞するのもおもしろいわけです。musiplではレビュアーの勝手な解釈でレビューをしているわけですけれど、みなさんにはみなさんの独自の解釈があって当たり前。「オレはそうは思わないぞ!」という方には、是非セルフレビューなどしてもらいたいですね。そういうことの積み重ねによって、音楽の楽しみ方はもっともっと深まっていくのだろうという気がします。

2位 Shing02『Time Travel Guide』:レギュラーレビュアー松浦さんのお気に入りバンドShing02のレビューが第2位に。「東アジア文化都市2017京都」のプロモーション映像だけあって、京都の観光名所が次々と出てくるのはなかなか嬉しいですね(京都住まい)。実際に行ってみるとやはり名所は素敵なのであって、素人カメラではその良さを捉えるのがなかなか難しい。しかしこういうプロの創る映像では実際の素敵さとはまた違った素晴らしさに仕上がっていて、映像の力はスゴいよなあと改めて感じます。バンドのMVというのも、アーチストが持っている本来の良さとは違う素晴らしさをアピールするための重要な武器なんだと再認識したりしました。

3位 キリンジ『エイリアンズ』:3位にはキリンジの名曲が。過去にもキリンジのレビューは2014年に1度あり、それ以降に「過去レビュー」としてツイートすると必ず多くのファンがリツイートしてくれてランキング上位に上がります。今回も最新レビューとして登場すると多くのファンにリツイートされて、ああ、熱心なファンに支えられているバンドなんだなあと再認識。バンドの活動が長く続くというのは、ヒット曲を出した時に瞬間的に増えるファンではなく、いつだって熱心に追いかけ続けてくれる熱心なファンが一定数以上いるからなんだよなあという気がします。そういうのを見ると、一時的なヒットを狙うのが如何に間違っているかということを思い知らされます。

6位 ザ・クロマニヨンズ『どん底』:6位にクロマニヨンズ。ブルハとかハイロウズとかクロマニヨンズとか、要するにヒロトとマーシーだろと普通に思うのですが、そういう認識は間違ってますかね? うーん、どうなんだろうか。RCサクセションが清志郎とチャボだろと言われたら、そりゃ違うよとすぐさま言っちゃいそうな僕ですから、クロマニヨンズはヒロトとマーシーだろと言われたら否定したい人の気持ちもちょっと解るし、難しいところですね。とにかく、この曲はシンプル過ぎて最初は拍子抜けしましたが、聴き込むうちに名曲だなあと感心するようになりました。彼らのこのシンプルさを見て、僕はハイロウズがかつてセックスピストルズの日本公演で前座を勤めた時のことを思い出しました。ベイ・シッティー・ローラーズというパロディバンド風のステージは当時のハイロウズファンには驚きだったしなんでそれなのかと肩透かしのような気分だったのですが、カッコつけることのカッコ悪さみたいなものを彼らは思っていたのではないでしょうかね。いや、当時のインタビューとか見てないので本当のところはよくわかりませんけども。

9位 BRADIO『LA PA PARADISE』:このバンド、ホントにカッコいいなあと思います。ほとんどのバンドは自分たちのカラーを打ち出すために苦心してたりする中、彼らはいろいろなテイストの音楽に手を出していて、まるで自分たちのカラーを消すために頑張っているんじゃないかと思うくらい。で、そんなにいろいろなテイストの音楽に手を出せば、実力が露呈してどれもが中途半端みたいなことになってしまうのが普通なのに、いやいや、どれもとってもカッコイイ。日本の若手、ホントすごいなと思います。マジリスペクトです。

10位 Ribet towns『メトロ』:すごくカワイイMVが第10位に。個人的には11月のマイベストなんですが、どうでしょうか皆さんにとっては。MV公開から2ヶ月ちょっとで7000回ほどの再生回数の京都のバンド。決して大資本を投下しているわけではないはずなのに、こういうクオリティレベルのアニメMVって、時代が変わってるってことなんでしょうかね。個人ベースでこのクオリティはホントすごい。もちろん金を賭ければ良いビデオが出来るというわけではないし、センス、なんでしょうね。動画だけじゃなくて音楽もとてもセンスいいですし。こういう音楽や表現がいっぱい無名のまま散らばっているのを見ると、僕なんかももっともっといろいろ頑張らなきゃなあという気になります。

 11月はいろいろなことがあったようで、あっという間に過ぎていきました。あっという間に過ぎていくのは歳をとった証拠なのでしょうか。まあ歳は取ってきていますけどね。ますます寒くなりますので、皆さんも体調崩されませんように。

(大島栄二)