2014年のmusipl.comでの8月アクセス数上位10レビューはこちら!

 
1位 ケリーマフ
『イカサマ』
 コワい。いや、カッコいい。このシャウトの仕方が、本当にシャウトというか、吠えているというか、悪態をついているというか、かなり独特で耳からなかなか離れてくれそうもない。これだけ吠えまくりなのにしっかりと音楽になっていて、とても面白い。ロックバンドの人は楽譜なんて読めなくて当たり前とか、いやいや楽譜も読めなくて音楽が出来るかとか、もはやそんな論争など意味不明なくらいに… (レビュアー:大島栄二)
 

 
2位 little phrase
『Time is golden』
 四季の狭間、要はあるひとつの季節の終わりを感じるときは物憂さと寂しさが付き纏う。暑さと大雨などで定まらなかった今夏などでも、蝉の声が減ってきて、朝の思わぬ涼しさに終わり的な何かに鋭敏になる。音楽もギラギラしたものよりも、こういった涼やかな反復と電子音の行き交う中に、たおやかに一陣の風に夏の名残と秋の気配、朝に近づく夜の帳の曖昧さを忍ばせるようなものを自然と求めてしまう… (レビュアー:松浦 達)
 

 
3位 Inside of the door
『11月』
 歌詞に具体性のない表現が連なっている場合、普遍性は高いので多くの人に共感してもらえいる可能性は出てくるが、一方で具体的でない分、イメージが形になりにくく、共感にまで至らない可能性も高くなる。相反する効果につながるのだとしたら、じゃあどうすればいいのかと問われるけれど、この曲はひとつの答えになっているのではないかと思うのだ。「同じさ、同じさ」「分かったよ、僕にもさ」「寂しくないよ… (レビュアー:大島栄二)
 

 
4位 SOLDOUT
『To the Ocean』
 とても軽やかで、悪く言えば、下世話で際どいセンスと、誰もが反応できるシンプルにしてR&Bとトイ・ポップの折衷が為されたような曲ともいえる。彼らは、ベルギーはブリュッセルからの男女デュオ。過去にペット・ショット・ボーイズのカバーをしていたり、オーセンティックともいえるダンス・ミュージックへの姿勢を崩さず、キャリアを重ねてきた。このMVでも過去の歴史の中の各国の多様な… (レビュアー:松浦 達)
 

 
5位 ライカキネマ
『三日月ワルツ』
 ボーカルとギターのシンプルなユニット。なのにこの凄絶なリアルはなんなんだろうか。絶叫するボーカルに注目が行くのは当たり前だと思うけれど、僕はこのギターにこそ注目したい。というか目と耳が釘付けになってしまうのです。一心不乱にギターをかき鳴らすその姿から発するオーラ。弾いているのは繊細なアルペジオなんだけれども、激するサビではストロークに切り替わり、椅子から飛び落ちるくらいの勢いで… (レビュアー:大島栄二)
 

 
6位 みるきーうぇい
『カセットテープとカッターナイフ』
 美形ボーカルがかなりロックなギターリフをかましていて、一見アイドルバンドの新しいバリエーションかと思ってしまうが、よく聴くとそんなのではないらしい。アイドルの付け焼き刃でこういう演奏にはとてもならない。だがそれ以上に耳を惹くのは歌詞だろう。この曲以外でもかなりショッキングな言葉が並び、いい加減に聴き流すことなど難しい。過激な言葉を敢えて選んでセンセーショナルに作品を仕上げているのか… (レビュアー:大島栄二)
 

 
7位 ぐしゃ人間
『死ね/死んじゃおっかな・・・』
 キワモノ的なタイトルとバンド名で、それだけで敬遠する人も結構いるだろうなと思います。実際キワモノ的な表現をする人のほとんどは変化球を投げるだけで価値もないことも多いけれども、この曲はそうではないですね。深い。変化球のような直球。映像は歌詞の内容を象徴的にドラマ化している感じですけど、内容自体はもっと普遍的な生への執着であり、パワーそのもの。誰しも生きていくのは大変だけれども… (レビュアー:大島栄二)
 

 
8位 ウワノソラ
『恋するドレス』
 ポップスの旋律にぴったりとハマる声というのは確かにあって、このバンドのいえもとめぐみさんもそういう声の持ち主である。思い起こせば大貫妙子もEPOも僕は既に売れてから後追いで知ったし、最近では流線型の一連の作品も気がついたら売れていて、慌てて後からチェックするように聴いたものだ。だからこういうまだまだ今後の約束などされていない状態のポップス声に出会うというのは貴重だと思っていて… (レビュアー:大島栄二)
 

 
9位 tonco
『台所と夕暮れ』
 剥き身で、生身の表現に対して過剰に評価がされる瀬があり、今のメディアは衒いなく、毒を吐くことや正論を言うことに麻痺させてしまうかのような磁力がある。“歌心”とは、この時代に求めるには加工されてしまうゆえに、現場での一回性に求めるだけでは事足りなくもある。ただ、“歌わなければいけない”人の声はわかる。この彼女の声の背景には、多くのミュージシャンの参加とともに、途絶えない音楽の轍を… (レビュアー:松浦 達)
 

 
10位 NORO
『DREAM in RUINS』
 トロピカルな雰囲気が充満。ギターのナイロン弦をつま弾く音の響きもトロピカルだし、歌声も南洋のゆったりとした時間軸を感じさせ、都会の喧噪から離れて夏休みに訪れる場所で流れていて欲しい、そんな印象のサウンドだ。この動画には歌詞の日本語訳が字幕表示されていて、まさに僕らの日常は信じるに足る現実なのかと問うている。こういう問いかけを攻撃的な何かで仕掛けるのではなく、トロピカルで全身の力が弛緩する… (レビュアー:大島栄二)
 

 
次点 Drop's
『かもめのBaby』
 街の中、遊園地やプールでもつい、流れている音楽に神経が向く。全般的にスピードが速く、アイドル・グループのものが多いのだが、あるとき、何だか急に空気感を変えるように軽快で重いギター・ロックが響いた。THE BAWDIESが出てきたときにおぼえたR&Bをベースに、生音と渋味を噛み締め、ロックンロールしようとする気骨が見えるどこかスタイリッシュにも野暮ったくも想える、その音は全く偏見ではなく… (レビュアー:松浦 達)
 

 
編集長コメント

 1位:ケリーマフ『イカサマ』:なんと2ヶ月連続のアクセスランキング1位。アーチスト本人たちも積極的にアクセスしてくれているようなのですが、それだけで1位を取るのは容易ではありません。徐々に評判を読んでいるのでしょうか。10月にはCDリリース決定です。

 2位:little phrase『Time is golden』:山口県で活動するバンドlittle phraseが2位にランクイン。僕だったらまずアンテナに引っ掛かって来ないテイストのバンドだけに、レビュアー松浦さんのアンテナとの違いがこのmusipl.comを立体的にしているんだなあと興味深い1曲でした。

 3位:Inside of the door『11月』:この曲を紹介した時にはまだまだ暑い盛りで、ちょっと時期外れかなあという想いも正直ありましたが、9月に入って気温も下がり、この曲をあらためて聴き直してみていい感じ度はさらに増してて面白いです。11月になったらまたアクセスして聴いてみたいなと思ったりして。

 5位:ライカキネマ『三日月ワルツ』:かなり初期に紹介した曲がなぜか突然ランク入り。チェックしてみたら本人のTwitterで紹介されてました。あらためて聴いてもやはりパワフルで感動的。

 7位:ぐしゃ人間『死ね/死んじゃおっかな・・・』:5位のライカキネマと同様、かなり以前に紹介した曲です。彼らはmusipl.comのTwitterでの「過去レビュー」などをちゃんとマメにリツイートしてくれたりしてますし、だからベスト10に入らなくても結構毎月上位だったりしています。今月はレビュアー3人による各自レコメンドで松浦さんが取り上げてて、それもアクセス増加に影響したようでした。

 8位:ウワノソラ『恋するドレス』:これ、個人的にも本当に大好きな1曲。ランクインはしてませんけどMISOLAの『カゼノフクヨル』もシティポップで大好きな曲。もちろんドロックな曲も好きだけど、ちょっとお澄ましした気分の時はこういうのを聴いて紅茶でも飲みたいものです。

 レビュー数も300を超え、サイトとしての厚みも出てきたかなあと感じてる昨今。こうしてずっと以前の曲がランク入りしてくるのはとても嬉しかったりします。それはもはや死語になりつつあるオリコンのヒットチャートが要するに新譜ばかりのランキングで面白くなかったのと同じで、旧い曲だっていいのは良いだろうという感じなのです。もちろんmusipl.comでは最新曲ばかりをレビューしてるのではなくて、新譜に関係ない曲を再評価していくというつもりで活動しているのですが、こうしてアクセスランキングが新旧入り交じる感じになるのはとても嬉しいことなのです。

 まあ現時点では全体のアクセス数もそんなに多くはないから、過去曲でもちょっとだけ注目されることでランク上位に入ってきたりします。なのでファンの皆様、アーチストの皆様、どんどん毎日アクセスしてみてください。よろしくお願いしますね。

(大島栄二)