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【ケリーマフ】

 吠え尽くすロックシンガー瑞穂のシャウトが本当に心地良い、いや、ウィーン少年合唱団のような心地よさではまったくなくて、ああ、人はここまで本音を形にしてもいいんだなという清々しさ。どうしても「ああ、世の中に不満を持って叫ぶことで何かをぶつけているんだな」なんて思ったりしてしまうのですが、話を聞くとどうもそうではないらしく、60年代の洋楽のロックにひとつの理想を持って、それと併せてやかましいロックサウンドと絶叫する女性ボーカルという組合せを目指しながら表現しているとのこと。今の日本の音楽シーンがリスナーの嗜好に合わせるかのように作品作りをしているのに較べたら、そういうマーケティングとは無縁の、自分たちがやりたい音楽を模索しているという不器用な彼ら。その叫びは純粋に音楽としての表現だったという、そしてそれが結果的にもカッコよくなっているという。そういう純粋な創作表現こそ、広告代理店的な手法の音楽芸能を打ち破って欲しいと心の底から思います。ライブ会場で声をかけても怒鳴られたりしないはずなので、機会があったら是非、生の彼らの轟音を体験してみるといいのではないでしょうか。


 

ケリーマフ『東京湾』

 

   
         
 

【古賀小由実】

 声が良いというのはそれだけで歌手としての大きくて決定的なアドバンテージです。歌声というのはトレーニングでどんどん良くなっていくものですけど、じゃあトレーニングで誰の声にもなれるのかというとそんなことはやはり不可能であるように、そもそも持っている声質というものは誰が逆立ちしても手に入れることの出来ない、その人だけが持っている宝物であって、そういう宝物を持った人が人前で歌おうという気持ちになるということもまたとても得難い貴重な福音のようなものです。古賀小由実さんの歌は、そんな感じのとても貴重な、至福の出会いのようなものでした。先月末にニューアルバムをリリースし、それまではHPにメールで注文するかライブ会場にいくしかなかったのが、タワレコでamazonで買えるようになったとのこと。それだけで大成功するのなら苦労は要りませんが、こういう人の声が、1人でも多くの人に届けばいいなと、願ったりしてしまいます。


 

古賀小由実『海が見たくて』

 


   
         
 

【NakamuraEmi】

 レビューで紹介した時のPVの強烈衝撃だったことは忘れることができないです。HIP HOPといっていいのか、彼女の歌うスタイルは第一印象としてはかなり攻撃的なんだけれども、歌の内容を見ていると、ただ単に辺り構わず攻撃するようなものではなく、自分の中身を攻撃することで自分を鼓舞する、そのことで高みに昇っていこうとする決意のようなものを感じます。彼女の作品が一環して『NIPPONNO ONNAWO UTAU』という名前でナンバリングされていて、この強さは日本の女の人が静かに内に秘める強さのようなものと連動しているのかもしれないと思います。だからけっして折れることなく、その活動はじわりじわりと前進していくのではないかと期待してみたりするのです。


 

NakamuraEmi『チクッ』

 


   
         
 
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さらに、【あららら】【POLTA】【柴田聡子】

 
 

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