2014年のmusipl.comでの9月アクセス数上位10レビューはこちら!

 
1位 くるり
『Liberty&Gravity』
 改めて、くるりという存在の異質さと真っ当さを際立てる曲だと思う。今でこそ、「東京」、「虹」、「ワンダーフォーゲル」、「ばらの花」、「Remember Me」など数多くの曲とメンバー変遷の中で都度、フォーマット・チェンジしてゆく中でも、その“流浪の佇まい”をして着実な支持をされてきたバンドとして既に15年目を越え、こうして続いている。若いバンドメンの方によく聞く。くるりのカバーをしようと思うと… (レビュアー:松浦 達)
 

 
2位 bandneon
『10秒だけ待ってやる』
 イントロから響いてくるギターの音が個人的に大好き。こういう音を適度なディレイをかけつつ鳴らし続けるのはギタリストにとっても幸福なことなのだろうと思う。そういうプレイヤーの幸福が必ずしもリスナーの幸福につながるとは限らないのだけれど、この楽曲では見事にリスナーの幸福につながっていて、聴いていて嬉しくなる。ボーカルも淡々と、しかし的確に歌を歌っていて、感情だけではない技術が… (レビュアー:大島栄二)
 

 
3位 三回転とひとひねり
『きりかえガールズ』
 言葉遊びが展開されているようなリリックビデオで、でもこの言葉遊びは遊びの領域を遥かに超え、言葉のちょっとした違いで変わってくるニュアンスの溝のようなものをえぐり出している。僕らの暮らしは人との関係によって成立していて、その関係を支えているのは言葉によるコミュニケーション。その言葉を僕らは存外に乱雑に扱っていて、だからその言葉のちょっとした遣い間違いによって生まれる溝が、良好だった関係にも… (レビュアー:大島栄二)
 

 
4位 ケリーマフ
『イカサマ』
 コワい。いや、カッコいい。このシャウトの仕方が、本当にシャウトというか、吠えているというか、悪態をついているというか、かなり独特で耳からなかなか離れてくれそうもない。これだけ吠えまくりなのにしっかりと音楽になっていて、とても面白い。ロックバンドの人は楽譜なんて読めなくて当たり前とか、いやいや楽譜も読めなくて音楽が出来るかとか、もはやそんな論争など意味不明なくらいに… (レビュアー:大島栄二)
 

 
5位 THE INTI
『Stand Up』
 ボーカルがかなりの圧力を伴って歌ってくる。だが意外にも演奏陣は落ち着いたテイストで淡々とプレイしていて、それが過剰に前のめりになることを防いでいて、圧力を感じながらも落ち着いて聴けるという絶妙のバランスを生んでいると思う。ロックなのかR&Bなのかファンクなのか、その辺もよく判らないのは、彼ら自身が言っているように、そういう音楽を融合させて表現しているからなのだろう… (レビュアー:大島栄二)
 

 
6位 NIKIIE
『Colourful』
 メッセージソングというものはこれ見よがしの言葉で諭されれば心に響くことはない。「こうしちゃダメだよ」ではなく「こうすると楽しいよ」であるべきで、それはメッセージソングに限らず普通の教育でもそうだ。学校とか機関の教育に限らず、親子の会話でも。NIKIIEは2011年にデビューし、1stアルバムはその夏の僕がもっともたくさん聴いたアルバムになった。彼女が放つメッセージは常に前向きで… (レビュアー:大島栄二)
 

 
7位 きのこ帝国
『東京』
 「東京」の一言で何を考え得るのだろうか。桑田佳祐は、あえてか、暗がりの慕情と悲しみを見出すような曲を作り、サニーデイ・サービスはさらりと爪弾くように風を攫い、外部からのストレンジャーとして、それでも、かろうじて繋ぐことができた“あなた”への想いを繋いだくるりの「東京」など、デモーニッシュなフレーズを持つ都市であり、記号性を帯びる。筆者も、「東京」という場所はいまだによく分からない… (レビュアー:松浦 達)
 

 
8位 Inside of the door
『11月』
 歌詞に具体性のない表現が連なっている場合、普遍性は高いので多くの人に共感してもらえいる可能性は出てくるが、一方で具体的でない分、イメージが形になりにくく、共感にまで至らない可能性も高くなる。相反する効果につながるのだとしたら、じゃあどうすればいいのかと問われるけれど、この曲はひとつの答えになっているのではないかと思うのだ。「同じさ、同じさ」「分かったよ、僕にもさ」… (レビュアー:大島栄二)
 

 
9位 0.8秒と衝撃。
『ARISHIMA MACHINE GUN///』
 小学生が「発明家になる!」と志したが、大抵の必要は発明されていて、革新的アイディアも捻り出せず「勉強しなさい」「今やろうと思ったのに!」。なんで僕を発明に集中させてくれないの。ヘルメットから伸びたアームに、切ったスイカを挿して、手ぶらで食べられる「食いやスイカ」を制作したが、誰も必要としていない発明品だった。そんな役に立たない珍発明を集め、キレイな写真と解説付きで編纂… (レビュアー:北沢東京)
 

 
10位 レトロカラーコレクション
『ダイアリー』
 コンパクトにインパクトを放つロックというのはこういう感じ。最近はギターロックと格好をつけてスタイリッシュなロックバンドが雨後の筍のように出てきてはいるものの、そいつらみんなカッコ悪い。で、僕はこういうのがカッコいいと思うわけです。彼らの歌詞がどうなのかはよく判ってなくて、なぜかというとイントロからグイグイ飛ばしてくれて気分も飛んでいって、そんな歌詞とかなんとかメッセージが… (レビュアー:大島栄二)
 

 
次点 ENTHRALLS
『漂流』
 少し鼻にかかる特徴のある高音。どことなく攻撃的で、デスメタルやハードコアなんかよりもよほど好戦的なトゲを感じます。そんなに攻撃的なんだったら歌なんて歌わなきゃいいのにとも思うんだけれど、おそらくこれが彼ら彼女らの世界とのつながり方なんだろうと勝手に解釈。聴く側の立場の勝手な意見を言わせてもらうならば、住む世界に満足していて問題なく暮らしている人の表現などより、不満に満ちあふれている人の… (レビュアー:大島栄二)
 

 
編集長コメント

 1位:くるり『Liberty&Gravity』:知名度というか、新譜発売日近辺のニュービデオだからなのか、まあ強いこと強いこと。2位にトリプルスコアほどの大差を付けた堂々のアクセスランク1位。musipl.comでも松浦氏にレコ評記事を書いていただきこちらも多くのアクセスがありました(記事の中ではやはりアクセス数1位でした)。

 2位:bandneon『10秒だけ待ってやる』:徳島県のバンドが堂々の2位ランクイン。サウンドは都会的で、もはやこういうサウンドが都会から出てくるというのはウソなんだろうという気がします。いや、徳島が都会なのかどうかは行ったことないのでよくわかってないんですけど…。

 3位:三回転とひとひねり『きりかえガールズ』:長崎のバンド。これもローカルな感じがまったくしません。じゃあローカルな感じって何なんだと問われれば具体的には何も言い返せないし、東京のバンドだってほとんどは地方から出てきてる若者によって組まれているのです。だからまあこういう曲が地方再生のカギのような気もしたりして(ちょっと強引でしたね)。

 6位:NIKIIE『Colourful』:普段はレビューしない日曜日に、自分の誕生日だからといって強引にレビューをアップした、自分自身への投げかけのような感じでしたがランクインして恐縮な限り。まあNIKIIEさんが人気なんでしょうけれど。個人的には2011年にファンになったきっかけの曲「春夏秋冬」が好きなんですけども、今回のレビューはこれでということで。

 7位:きのこ帝国『東京』:そこそこに人気が出てきている若手のホープ的存在ですが、僕自身はそんなによくは知りませんでした。でもセルフレビューや松浦氏のレビューで聴く機会を得て、そういう出会いもステキなものだと思います。何がきのこで何が帝国なのかは今もよくわかりませんが、最近のバンドは名前が本当に不可解なものが増えてきてるので、そんなに驚くポイントではないのかもしれません。

 10位:0.8秒と衝撃。『ARISHIMA MACHINE GUN///』:このバンドも名前だけ知ってたという存在で、北沢東京さんのレビューで初めて触れました。いやあ、ぶっ飛んでいる。基本的に塔山忠臣さんがぶっ飛んでるんだろうけれど、一緒に飄々として歌っているJ.M.さんもかなりの曲者だと見た!ライブを生で見てみたいです。

 その他にも4位のケリーマフは7月8月の連続アクセスランクトップからは落ちたもののいまだに上位をキープしていてしぶとい人気を固めている様子だし、8位のInside of the doorも先月の3位から引き続きランクイン。こういう長く勢いが保たれるバンドには、きっといい未来が待っているんじゃないかなと思います、僕。

(大島栄二)